第十章
[8]前話
「まさか近衛士官として務めている王宮でな」
「学者の方とお知り合いになって」
「結婚するとはな」
「本当にわからないものですね」
「うむ、しかしいい夫君の様だし」
「あの娘にとってもいいことですね」
「そのことは確かだ」
間違いなく、とだ。伯爵はこのことは見極めていた。
そしてだ、こうも言ったのだった。
「幸せになれる、しかしライズが軍人を辞めるとはな」
「それもこれ程早く」
「それだけ子爵が素晴らしい方ということか」
「あれだけ好きな軍人としての務めよりも」
「そういうことだな、ではな」
「それではですね」
「それならそれでいい」
受け入れている言葉だった、明らかに。
「充分だ」
「左様ですか、では」
「それでいい、是非な」
こう話してだ、そのうえでだった。
妻にだ、こう言った。
「祝おう、ライズを」
「親としてですね」
「娘の今の幸せをな、これからの幸せを」
こうしたことを話してだ、そしてなのだった。
実際にライズに祝いの言葉と贈りものを贈った。そうして娘のそれを祝福したのだった。彼女の幸せそのものを。
剣を捨てて 完
2014・10・23
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