明日への翼
04 RHAPSODY
[9/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
じろぐことはなかった。
「──ふぅん、可愛いじゃない、ま、私よりは劣るけどさ」
挑発するような口調だけれど。
以前の、二級神だった頃のスクルドならすぐに乗っていたところだけれど、さすがに今は違っていた。
にっこりと微笑んでいる。
「確かにあなたも可愛いわね、時代と共に美の基準って変化するから」
洋子の片頬が引きつっていた。
「……そっか、あんたなんだ。幼馴染って噂だったけど本当なのね」
「何のこと?」
「仙太郎がずっと見ていた人。私を通してずっと探していた人」
スクルドにとって嬉しい言葉だった。
けれど素直に喜べなかった。
目の前の洋子を見ていたら。
私を通して。
つまり目の前のこの人は仙太郎と。
「ずるいじゃない、いまさら出てきて」
何も言い返せなかった。
「ずるいじゃない。忘れようって思ってたのに」
絞り出すような声だった。
「私ね、高校に入って入学式の時に仙太郎と知り合ったの。雨が降ってた。私は傘を忘れて……俺は走って帰るからいいよって貸してくれたの。入学したばかりで私のこと何にも知らないのにね。「一緒の学校なんだからついでのときに返してくれればいいよ」って。
それからずっと仙太郎を見てた。
ずっと……半年前になけなしの勇気を振り絞って私からコクったの。仙太郎から見れば凄く強引だったんだろうけど……ね。
でもね、どんなに好きでも仙太郎は私を見ていなかった。
私の向こうに私じゃない誰かを探してた。
わかる?それがどんなことか。
いつか自分を好きになってくれるんじゃないかって、自分だけを見ててくれるんじゃないかって、想って……」
「六年前──あたしはこの町に住んでたんだよ」
スクルドは眼を伏せて話し出した。
「お姉さま二人と、姉さまの恋人とね。ある日、落ち込むことがあって川原でぼんやりしてた。寝転がって空を見てた。そんな時だった、仙太郎にあったのは。あいつね、いきなり空から落ちてきたんだよ」
「落ちてきたって?」
「自転車と一緒にね」
苦笑するスクルドに洋子は眼を瞬いていた。
「そんな不安定で危ないものに何で乗るのって聞いたら「だから乗るんだよ」って笑ってた。「たから面白いんじゃないか」って。
仙太郎と遊ぶようになってあたしは世界が広がったの。
はじめはほんとうに一緒にいるだけで楽しかった。
楽しかった。
毎日が輝いてた。
仙太郎はあたしの背中に翼をくれたの」
比喩ではなく、確かに仙太郎はスクルドに翼を──天使を与えたのだが。
「でもね、別れの時がきたの。お姉さまの恋人が……交通事故で死んだのよ」
「じゃ、姉さんと一緒に母国に戻ったのね」
「あ、えっと……」
返答に窮してしまった。
自分が女神であるってことは秘密にする
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ