明日への翼
04 RHAPSODY
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ら一人一人の意思がある人間のこと、集まれば必ず何か問題が起こるわけで。
当然のことだが休み時間にはクラスメイトからの質問攻めにあった。
「ね、ね、母国(くに)は何処なの?」
スクルドが女神であることは秘密にすることは仙太郎と既に相談して決めていた。
大丈夫、僕に任せて。
嘘のつけないスクルドに変わって仙太郎が答える。
「リトアニアだよ」
「て、何処だったけ」
別の生徒が割って入った。
「バルト海沿岸の元ロシア領だよ。一九九一年、独立」
「どうして日本に来たのって、これは野暮よね」
「日本語上手ね」
「ああ、彼女は純粋なリトアニア人じゃなくていろいろと混ざっているんだってさ」
「あのあたりは歴史やら人種やらいろいろと複雑になっているらしいからな」
五時限目に入る頃には二人のことを知らないものは校内にいなくなった。
放課後。
赤石洋子と取り巻きの女生徒数名が図書室にいた。
もちろん回りは受験生だらけだからみんな必死に頑張っている、かというとそうでもなかった。勉強の場に使っている者も確かに存在するのだが、大抵は軽口とおしゃべりの場でもある。もう少し季節が進めばまた別になるのだろうけれど。
食べる物は持ち込み禁止な筈だが守られているわけもない。お目こぼしってわけだ。
洋子は不機嫌な顔で少女コミックに眼を通していた。
取り巻きの一人、梢が心配そうに声をかけていた。
「洋子ぉ、ほんとにいいの」
「なにが」
「仙太郎のことだよ」
「いいも何も別れたんだし」
細い指でポテトチップの袋から中身を摘んで取り出した。
ぱりぱりと小気味のいい音が続いた。
煩そうに右手で前髪を掻きあげた後、親指の爪を軽く噛んでいる。
嘘を言ったりいらいらしたりしているときにするいつもの癖だ。
ダイエットしてたんじゃなかったっけ。
梢は心配そうに首を傾げていた。
次の日の午後。猫実南高校の二年一組。仙太郎たちの教室。
担当の教師が古文の授業を続けているが、スクルドにとっては既に持っている知識なので退屈なだけだった。歴史、音楽、語学、数学、生物、物理。すべてが頭の中に入っていて、教えてもらうことなどないが、それでも仙太郎のそばにいて同じ時間を過していることはとても貴重なことだった。
大勢で講義を受けるのも新鮮であった。
携帯が振動しているのに気がついて、教師の眼を盗んでメールを開いた。
放課後。
校舎の屋上ではスクルドを洋子が取り巻きと一緒に待っていた。
「あなたが噂のスクルドちゃんね」
「そうだけど、なにかしら」
洋子は取り巻きを屋上の入り口まで下がらせた。
取り巻きたちは心配そうに入り口にいたが、洋子の視線を受けで階下へ下りていった。
刺すような視線にもスクルドはた
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