明日への翼
04 RHAPSODY
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どんな関係になっても私は何も言わないけど、少なくとも仙太郎。自分の力でお金を稼いで暮らせるようになるまでは、子供は我慢しなさい。いいわね」
なんともはやオープンな親だこと。
仙太郎の真剣な瞳。
「わかった。約束するよ」
「ま、この若さで「おばあちゃん」はごめんだしね」
カラカラと笑っている。
どうやら彼女も「女傑タイプ」らしい。
スクルドは脱衣所で天衣を解いた。
お湯が溜まっているのは確認済みだ。
長い黒髪をアップにまとめてゆったりとした湯船に身体を沈めた。
ざ
湯船からこぼれたお湯が排水溝に流れ込んでいる。
ふう。
スクルドの溜息。
「よかった。お父様もお母様もいい人で」
天井を見上げる。
うまくやっていけそうだよ。お姉さま。
朝の玄関先。
仙太郎はきっちりと学制服を着こなしていた。詰襟なんていまどき古風だが、制服なんだから仕方がない。
「じゃあ、いってくるよ」
学生鞄を手に出て行こうとする彼を慌てたように呼び止めたのはスクルドだ。
「行って来るって?」
「学校だよ。俺、高校生だし」
「あ……そうか」
「え?」
スクルドは後ろ頭を掻いていた。
「あたし地上界の学校には行ってないから」
ああ、そうなんだ。
仙太郎は納得していたが、だからって高校に行かないってわけにも。
「一緒に行っていいかな」
興味津々といった瞳が彼を見詰めていた。
「学校の外までなら。いまいろいろと煩いし」
「大丈夫よ、仙太郎以外には見えないようにするから」
今度は仙太郎が「あっ、そっか」だった。
仙太郎の通う県立猫実南高校は彼の足で歩いて十五分ぐらいのところにある。
グラウンドも広く校舎も新しくて綺麗で設備も充実していて文句のつけようがないのだが、ただひとつ、家から近すぎて自転車が使えないってことが不満って言えばそうだ。
学校の校舎が近づくにつれて学生たちの姿が目立ってきた。
スクルドは既に姿を消している。
仙太郎と同じ学生服の男生徒。女生徒は黒に近いほど濃いグリーンのブレザーと胸元にはリボン。
背後から肩を叩かれて振り返った。
「おいっす、川西」
中学時代からの親友の九十九だった。
背の高さは仙太郎と同じぐらいだが、胸の厚さや体重はずっと九十九の方があるようだ。仙太郎と同じスポーツ刈りの日焼けした顔に意志の強そうな瞳が光っていた。
「お前、赤石と別れたんだって?」
「なぜそれを」
「赤石本人からメールが来たぜ。もうほとんどの奴が知っていると思うぞ」
携帯を片手に、なにをいわんやとばかりだった。
赤石洋子とははじめから何もなかった……。と言い掛けてやめた。あまりにも卑怯に思えたからだ。
「まあ気にするな。なんだったらいい娘紹介するぞ
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