薄明
非常警報
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『異常無し。
パスワードをどうぞ』
澄明な水晶の波紋を連想させる思考が閃き、合成音声が脳裏に響く。
( 命令をどうぞ )
複雑な事柄を言葉化する手間を省き、思念波入力モードに切り換える。
(搬入した重症患者の治療を頼む。
未知の黒魔道が作用しており、ベック公ファーンや私とは症状が異なる。
治療へ入る前に、診察結果を報告せよ。
適用される治療方法から、所要時間を計算して欲しい)
公開禁止技術に相当する故セカンド・マスターも出て行け、と言い出すのだろう?
不貞腐れた思考を読み取られぬ為、サイコ・バリヤーを強化するが。
アルド・ナリスの些か失礼な予測は、見事に裏切られた。
( 治療請求者には放射能症が確認され、正常な血液が循環していません。
合成された粗悪品が全身を浸蝕変質させつつあり、人工透析が必要です。
基礎的な細胞神経の活動が妨げられ、新陳代謝に異常が生じています。
複製の肉体へ意識内容を移植、或いは改造体への細胞変換が必要となります。
治療請求者の細胞が発する固有の震動周波数は、ファイナル・マスターと同一。
両者の直接対面は論理的矛盾、時間矛盾排斥現象《タイム・パラドックス》に該当。
時空雪崩現象《クラッシュ》、次元なだれ惹起の確率75%。
四次元時空連続体の崩壊、時震《タイム・クェイク》誘発が懸念されます。
報告事例に拠れば《時震》発生の際、細胞震動周波数の同一所有者は共存不可。
エネルギー総量の少ない方が、固有の四次元時空連続体より弾き出されます。
要治療者が当時空から排斥され、次元放浪者となる確率99.999%。
当第十三号転送機の内部設備では、想定される事象の回避は不可能。
複製体の製造及び意識内容の移植、改造体への細胞変換は能力を超えています。
母船《ランドシアF》の医療室への移動、関連設備の作動許可が必要ですが。
該当作業の認可は、セカンド・マスターの権限を越えています。
治療の実施を求める場合には、ファイナル・マスターの許可が必要です )
最後の常套句を除き、想像を遙かに上回る衝撃的な宣告が下された。
アルド・ナリスの顔面も蒼白となり、闇色の瞳が宙に彷徨う。
細胞震動周波数が一致する、との説明を素直に受け取るとすれば。
スカール、グインは同一人物とも解釈されるのではないか?
ヴァレリウスも何と言って良いか見当も付かず、おろおろと両手を揉み絞っている。
狼狽を隠せぬ策謀家2人の耳を、ヨナ・ハンゼの冷静な声が貫いた。
「想定外の事象が確認されたと判断し、ファイナル・マスターへ状況を説明せよ。
其の様に命令していただくのが妥当ではないか、と思われます。
我々に判断可能な水準を超え
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