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豹頭王異伝
曙光
遠征準備
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「アムネリス母子が無事な事は、良くわかった。
 中原全体に及ぶ事項に関し、カメロン殿と話をせねばならぬ。
 真夜中故に当然、御就寝中であろうが已むを得ぬ。
 不躾ながら即刻の面談を所望する、と伝えてくれ」

 年寄りを邪険にしおって、等とブツブツ呟く闇の司祭。
 グインに睨まれた黄金の骸骨が神妙な表情を繕い、口を噤む。
「かしこまりました」
 上級魔道師エルムは無関心を装い、丁寧に一礼。
 魔道師ギランに遠隔心話を飛ばし、カメロンに報告させる。
 イシュタール北方、クリームヒルドの塔に快男子が現れた。

「グイン殿、貴方と再びお話が出来るとは!
 これこそ、ドライドンのお恵みですな!!」
「一別以来だが、お変わりは無いか?
 壮健そうで何よりだ、御無礼の段は平にお詫びを申し上げる」
 広大な大洋を照らし出す海路の日和、輝く太陽の微笑が溢れた。

「何が壮健ですか、この憔悴し切った顔を良く御覧下さい!
 面倒な雑務を押し付けられて、眼が廻っておりますよ。
 海が恋しい、一介の船乗りに戻る夢を何度見た事か。
 こんな内陸の国なぞ放り出し、脱走して海に出たい。
 そんな思いが募り、鬱積して毎日悶々としておったのですがね。

 元ユディトー伯爵ユディウス・シンを説得してくれて、助かりましたよ。
 ユラニアの誇る軍師殿を送り込んでくれなければ、本当に逃げ出していたかもしれない。
 パロの魔道師も派遣してくれて助かりました、貴方は新生ゴーラ王国の大恩人です。
 オリー母さんが傍に居てくれれば、アムネリスも落ち着くでしょう。
 イシュトが面倒事を引き起こしてるんじゃないか、と心配なのですがね。
 ダーナムで戦った後の状況が掴めず、気を揉んでおりました」

 猫族の丸い瞳がトパーズ色に煌き、誠実な鋼鉄の瞳を覗き込む。
「イシュトヴァーンは夢の回廊、黒魔道の術に不意を突かれ負傷した。
 生死に係わる程ではないが当分の間、大人しく寝ている他は無いと思われる」
 グインは言葉を飾らず、状況を簡潔に告げる。
 カメロンは鋭く息を呑んだが余計な口は挟まず、次の言葉を待った。

「アモンと名乗る黒魔道師が異常に強力な術を用い、クリスタルを制圧している。
 カメロン殿も密偵により御存知の事と思うが、パロでは常識の通用せぬ事態が起こった。
 竜の門と称する黒魔道師、怪物が現れ無辜の民を餌食としている。

 元凶は遙か東方の大国、世界征服の野望に取り憑かれた魔道王だ。
 俺は嘗て死の砂漠ノスフェラスを超え、キタイに赴いた。
 旧都ホータンが無残に喰い荒らされ、人々の蹂躙される有り様も目の当たりにしている。
 キタイの民も親兄弟を喪い深く傷付き、パロを上回る惨状の中で苦痛に喘いでいるが。
 希望を棄てず家
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