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豹頭王異伝
曙光
嵐を呼ぶ男
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「チッ。
 生意気にも、えらく落ち着いておるではないか。
 フン、忌々しい。
 ひとつ、脅かしてやるか?」
「やめんか、大人気ない!
 貴様の横言に付き合っていては話が進まぬ、静かにせんか!!」
 豹頭の戦士は軽く右手を挙げ、黒魔道師の独り言を遮った。

 邪険に扱われたのが不服と見え、駄々っ子の様に不貞腐れて黙り込む闇の司祭。
 何時の間にか足の爪先まで骸骨の身体を現し、全身で不機嫌を強調《アピール》。
 望星教団の教主ヤン・ゲラール、アルゴン化を遂げた右半身の如く。
 透き通る水晶と化した全身を、赤や青の光が駆け巡る。
 夜空に煌く瞬星灯《イルミネーション》の如く、多種多様な光を明滅させる巨大な髑髏。
 輝ける骸骨が大袈裟に肩を聳やかし、雄弁に不満を表現。

 対照的に、パロの魔道師は全く表情を変えぬ。
 顔面の筋肉を一筋も動かす事無く、律儀に王の言葉を待つ。
 グラチウスは梟の様に惚け、グインは溜息を付いた。
 じろりと骸骨に一睨みを呉れ、軽く咳払い。
 豹頭の戦士は困惑を払い、パロの魔道師に語り掛けた。

「早速だが、状況を確認したい。
 アムネリス王妃に夢の回廊、アモンの術は及んでおらぬだろうか?」
 上級魔道師エルムは落着き払い、神妙な面持ちで答礼。
 グインの心中を察し、何も聞こえなかったかの様に言葉を連ねる。

「世界三大魔道師に名を連ねる闇の祭司様、御高名は世界に鳴り響いております。
 遙か彼方パロの地におられる豹頭王様より、御下問をお受けするは光栄至極なれど。
 私如きの魔力にては到底不可能、グラチウス様の御助力たる秘術の賜物。
 また御下問にお答えするも叶わぬ事、重々承知しております。
 中原の守護者、ケイロニアの誇る豹頭王様に御報告させていただきます前に。
 先ずは闇の祭司グラチウス様に感謝を捧げ、御礼を申し上げます」

 齢八百を超える老魔道師が、顔を輝かせた。
 機嫌が直ったと見え、水晶の髑髏が虹色に光り輝く。

「ほう。
 木っ端魔道師にしては珍しくも、真っ当な口の利き方を心得ておるようだ。
 ヴァレリウスの阿呆めとは全く以って大違い、白魔道師にしておくのは惜しい。
 見所のある奴じゃ、精進せいよ」
 黄金に黒玉の戦士は再び、深い溜息を付いた。
 気の利いた上級魔道師は素知らぬ振りを押し通し、つるつると滑らかに報告を再開。
 自称816歳の少年は知らぬ振りを決め込み、微塵も動きを見せぬ。
 些か精神的疲労を覚えつつ、グインはエルムへ感謝の視線を投げた。

「此れ程までに使える奴を部下に持っておるとは、ヴァレリウスの阿呆めが意外じゃな。
 世界三大魔道師の筆頭、地上最強の黒魔道師グラチウス様に弟子入りせんかね?

 魔道師ギルド、白魔道
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