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豹頭王異伝
曙光
精神治療
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認させていただきました。
 陛下に斬りつけられた夢が記憶に焼き付かれ、現実と混同されています。
 負の感情を鎮める為、強力な暗示が必要と診断せざるを得ません。
 夢の回廊に関連する記憶を封じ精神の安定化、心理学的治療を試みました。

 誠に申し訳無き仕儀ながら御就寝いただき、交代で御守護申し上げております。
 王妃殿下の御心から無用な恐怖、不安を取り除く作業も慎重に進めさせて頂く所存。
 マリニア殿下の聴覚治療、心話の擬似音声を発声訓練の一助とする手筈も整えました。
 上級魔道師1名、下級魔道師3名が急行中であります」

 グインの緊張が解け、面に安堵の色が滲み出た。
 黄金の毛並みに黒玉の斑点を散らした鮮やかな色彩が波打ち、深々と太い息を吐き出す。

「感謝する、ディラン殿。
 丁寧な御説明、痛み入る。
 真に忝い、大いに安心させて貰った。
 宜しく頼む、必要な物があれば何でも言ってくれ」

「御心配には及びませぬ、宰相ハゾス閣下には既に報告し御理解を戴いております。
 心底より真摯に王妃殿下を心配されている従者、パリス殿にも格別の配慮を賜りました。
 ハゾス閣下の御判断で選帝侯アウルス・フェロン殿、ロベルト殿も事情を御承知です。
 宰相の采配宜しきを得て必要な物も全て用意していただき、誠に恐縮であります」

「侍女クララ、従者パリスか。
 迷惑を掛けてすまぬと直接、礼を言わねばならぬところだ。
 シルヴィアの相手を務める辛さは、身に滲みている。
 2人の精神的疲労も癒し、心を配ってやって貰えると助かるのだが」

「畏れ多い御言葉を賜り有難く存じます、陛下の御心遣いに感謝致します。
 陛下から直接に御言葉を掛けて頂ければ御2方とも、大変に勇気付けられる事と思います。
 大変申し上げ難い事ながら王妃殿下の御相手は、非常に精神的消耗が激しいのです。
 陛下から御二方に直接、御言葉を頂ければ私共も大変助かります」

「尤もだな、良くわかった。
 早速、2人と話せる様にしてくれ」
「畏まりました、御理解を戴き重ねて感謝を申し上げます。
 別室にて就寝中ですが、お連れ致します」

 1級魔道師モルガン、キノスの姿が消える。
 数タル後、寝室の扉が開いた。
 のっそりと歩を運ぶ武骨な大男、従者パリス。
 牛を思わせる顔は内心を窺わせず、小さな眼が寝台に注がれ気遣わしげな光が滲む。

 続いて何事か災いが生じるに違いないと決め込み、頻繁に周囲へ視線を走らせる年若い女官。
 挙動に落着きが無く不安気な風情を漂わせ、警戒心が強い印象を見る者に与える侍女クララ。
 出来る事なら王妃と極力、距離を置きたいと願う内心と蓄積された心労が露呈している。
 2人を先導した魔道師は、何も無い空間に
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