薄明
心の鍵
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絶対、他言無用だぜ。
マルコや部下共だけじゃねぇ、グインやカメロンもだ。
魔道師の連中にも読み取られちゃ駄目だ、吟遊詩人みてぇに喋り捲るからな。
ナリスの他には誰にも言わねぇ、と約束してくれるか?」
「大丈夫だよ、我が魂の分身イシュト。
アルド・ナリスの名に懸け決して口外せぬ、と固く約束するよ」
イシュトヴァーンも弁舌の魔術師には敵し得ず、心の裡を曝け出した。
ヴァレリウスも驚く程、素直に事細かく悪夢の内容を捲くし立てる。
本当は脅かされた子供の様に、誰かに話を聞いて貰いたかった。
『お前が悪いんじゃない』と、心を支えて欲しかったのだ。
「…何だか、変な感じなんだ。
死ぬほど痛いのに、とっても嬉しいんだ。
生まれて初めて、心の底から安心出来た様な気がする。
この傷のおかげで生まれ変われたみたいな
此の世界に居ていいんだ、って神様に保障してして貰った、みたいな。
そんな感じがするんだよ。
…母親に、会った様な気がする。
今まで一度も、母親の事なんて思い出した事無かったんだけどな。
赤ん坊に帰って、母さんの胸に抱き締められてさ。
お前は一人ぼっちじゃないんだ、母さんが守ってあげる。
お前は此処に居ていいんだよ、ってさ。
暖かい声が聞こえて来た様な、そんな気がするんだよ」
気の済むまで喋らせ、口を挟まず黙って聞き続ける闇と炎の王子。
一区切り着いた所で、ナリスは暖かい微笑を披露した。
「良く、わかるよ。
私も常日頃、同じ思いを感じていたからね。
外傷の痛みがあった方が、生きている実感が得られる。
普段の自分は誰かの操り人形でしかない。
本当は私と云う存在は、実在していないんじゃないかと思える。
自分の人生を生きているのではなく、錯覚させられているからなのだろうね。
皆、自分を偽って生きている。
誰かの夢と期待を背負わされ、自分の人生だと思い込まされているのだよ。
本当に自分の人生を生きている人間は、殆どいないと思うよ。
誰かに騙され、誰かの夢を自分の夢だと思い込まされている人間が如何に多い事か。
誰かに駆り立てられて燃え尽きていく、真面目で責任感の強い正直者がね。
イシュト、君は生まれ変わったのだよ。
偽りの自分を刺し貫く事で、誤って身に着けた殻を脱ぎ捨てる事が出来たのだよ。
古代機械のおかげで生まれ変わった私と、同様にね。
悪夢と自傷の代償として、真実の自分自身となる事に成功したのだ。
何も、心配は要らない。
次に目覚めた時、君は《災いを呼ぶ男》ではなくなっている自分を発見するだろう。
アルシス王家の亡霊から解放された私と、同じ様にね。
今は膿を出し切った心の傷と同様に肉
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