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豹頭王異伝
薄明
悪夢の襲来
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体の内部へ温もりを生じさせ、安心感が満ち溢れた。

(自分は、護られている。
 自分は、此処に居ても良いのだ)

 生まれて初めて得られた、自己肯定感。
 止め処無く涙が溢れ、脾腹の激痛が和らぎ遠去かって行く。
 霞む視界を透かし、懸命に女性の顔を見分けようとするが。
 スーティを抱きしめる慈母、フロリーの輪郭が霞む。

 黒い髪が透き通り、豪華な金髪に染まって行く。
 黒曜石の如き瞳が輝き、エメラルド色の瞳に変化する。
 カメロンの声が、何処からか響き懐かしい感情を蘇らせる。
 複雑に共鳴し反響する力強い声が、彼の呪縛を解いた。

「良かったな、イシュト。
 お前にも、家族が出来たんだよ。
 お前はもう、1人じゃない。
 母親と兄弟が、待っている。

 俺が父親では、役不足かもしれんがな。
 お前は、生まれ変わったんだ。
 もう、不安に怯える必要は無い。
 俺だけじゃない、ナリス様も居る。

 お前を抱きしめてくれる人が、待っている。
 お前を護ってくれる存在が、ずっと傍に居てくれる。
 もう、泣く必要は無い。
 暗黒の時代、ドールの時代は終わりを告げた。

 お前は中原を覆い尽くさんとする鮮血の流れに抗し、漆黒の闇を払う降魔の剣。
 未来を切り拓く希望の光、ルアーの剣を体現する新たな中原の守護者となれ。
 お前の心を暖めてくれる癒しの光、温もりが感じられるだろう?
 此処に、還っておいで。

 ゴーラ王イシュトヴァーンとして、じゃない。
 俺が跡継ぎと見込んだ、無鉄砲だが魅力に溢れた若者。
 オルニウス号の連中も認めた、海の兄弟。
 ヴァラキアのイシュトヴァーン、としてな」


(気付いたか、ヴァレリウス?
 母親の顔に、見覚えがある。
 あれは確かアムネリスお気に入り、親友にも等しい紹介された侍女フロリーだね。
 抱いている幼子は、本人の投影なのかな?

 それとも、イシュトが子供を産ませたか?
 カメロンの密使に拠れば、アムネリスとの間に第1子が誕生した筈。
 私生児がいる、と聞いた覚えは無いが。
 報告を受けていたにも関わらず、故意に隠していた訳ではないだろうね?)

(勘弁してください!
 私だって、初耳ですよ。
 まぁ此のならず者なら当然と言うか、本当にフロリーの子供かも知れませんが。
 正妻の目を盗んで侍女に手を付け、孕ませる位の事は日常茶飯事じゃないですかね。
 死の砂漠ノスフェラスや海賊船で放浪中、リンダ様にも手を出してたんでしょう?
 天地が鳴動する驚天動地の秘事とは全く思えません、当然起こり得る事と愚考します!)

(手厳しいね、否定は出来ないけれども。
 竜王絡みで私も手一杯だったからな、この件に関しては不問として置
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