暁 〜小説投稿サイト〜
豹頭王異伝
薄明
謎の病状
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
思うが。
 スカールの身体と同様、私の頭脳も古代機械に診察して貰う方が良いのかな?」

 ナリスは鉄仮面、いや、鉄面皮の表情を崩さぬ。
 ヴァレリウスの裡から迸った声にならぬ悲鳴、心話を完璧に無視。
 眉一筋も動かす事無く涼しい顔で聞き流し、パロ最強の魔道師を凝視。
 役者が違う。
 ヴァレリウスは灰色の瞳を瞑り、魂の底から搾り出す様な深い溜息を吐く。
 ヨナも思わず苦笑するが、ファーンが口を開いた。

「何の事か良く解らないが、スカール殿が心配だ。
 出来れば一刻も早く治療を施し、苦痛を取り除いて差し上げたいのだが」
「失礼しました、全く同感ですね。
 即刻、古代機械を呼び出しましょう」

 一瞬で深刻な表情に切り換え、真摯な瞳と真剣な口調で応える闇と炎の王子。
 灰色の瞳に仄見える恨めし気な視線は、完全に無視。
 ヨナが笑いを噛み殺し、ヴァレリウスを慰める。
 ナリスは無表情に腹心を眺め、キイワードを念じた。

 ベック公ファーンが驚愕の声を上げ、パロ聖王家の秘蹟を凝視。
 古代機械の指名した正統後継者の声が優しく語り掛け、従兄弟の耳に染み込む。
「驚かせてしまって申し訳も無いですが、何分にも非常事態ですから勘弁して下さいね。
 一刻も早く苦痛状態から解放する為に、スカール殿を奥へ運びましょう。
 私と一緒に入れば、全く問題はありませんよ。
 手を貸していただけませんか、ファーン」

「怖いよ、ナリス。
 申し訳無いが、私は入りたくない。
 貴方を訪れた後に聖王宮へ赴き、レムスの変貌を見た時とは正反対だが。
 何だか此の世の物とは思えない、神々し過ぎて焼き尽くされてしまいそうな気がする」
 パロ聖王家に属するとは言え魔道の造詣は皆無、極めて正常な感覚を保つ誠実な武人。
 勇敢なベック公も流石に、足を踏み出しかねた。
 武人に似合わぬ躊躇を見せ、僅かに後退する聖騎士団の大元帥。
 従兄弟の心情を慮り、ナリスは虫も殺さぬ優しい笑顔を見せる。

「謝らなければなりませんね、ファーン。
 全く当然の反応です、私が迂闊でした。
 レムスに憑依した竜王を見た際、心理的な傷を負った筈ですからね。
 古代機械を見るのも初めてですし、拒絶反応が生じるのも無理はありません。
 少しだけ待っていてくださいね、ファーン。
 数タル後には追い返され、戻って来ますよ」

 ヴァレリウス以外の魔道師は散り、周囲に結界を展開。
 ベック公は不安を顔に湛え、扉の前に残った。
 ナリスが先導を務め共同研究者ヨナ、パロ最強の魔道師が同行。
 古代機械の探究者ナリス、ヨナは慣れた様子で歩を進めるが。
 ヴァレリウスは表情が固く、内心の緊張が透けて見える。

 水晶の様に透き通り、多彩な光が縦横に疾
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ