薄明
謎の病状
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思うが。
スカールの身体と同様、私の頭脳も古代機械に診察して貰う方が良いのかな?」
ナリスは鉄仮面、いや、鉄面皮の表情を崩さぬ。
ヴァレリウスの裡から迸った声にならぬ悲鳴、心話を完璧に無視。
眉一筋も動かす事無く涼しい顔で聞き流し、パロ最強の魔道師を凝視。
役者が違う。
ヴァレリウスは灰色の瞳を瞑り、魂の底から搾り出す様な深い溜息を吐く。
ヨナも思わず苦笑するが、ファーンが口を開いた。
「何の事か良く解らないが、スカール殿が心配だ。
出来れば一刻も早く治療を施し、苦痛を取り除いて差し上げたいのだが」
「失礼しました、全く同感ですね。
即刻、古代機械を呼び出しましょう」
一瞬で深刻な表情に切り換え、真摯な瞳と真剣な口調で応える闇と炎の王子。
灰色の瞳に仄見える恨めし気な視線は、完全に無視。
ヨナが笑いを噛み殺し、ヴァレリウスを慰める。
ナリスは無表情に腹心を眺め、キイワードを念じた。
ベック公ファーンが驚愕の声を上げ、パロ聖王家の秘蹟を凝視。
古代機械の指名した正統後継者の声が優しく語り掛け、従兄弟の耳に染み込む。
「驚かせてしまって申し訳も無いですが、何分にも非常事態ですから勘弁して下さいね。
一刻も早く苦痛状態から解放する為に、スカール殿を奥へ運びましょう。
私と一緒に入れば、全く問題はありませんよ。
手を貸していただけませんか、ファーン」
「怖いよ、ナリス。
申し訳無いが、私は入りたくない。
貴方を訪れた後に聖王宮へ赴き、レムスの変貌を見た時とは正反対だが。
何だか此の世の物とは思えない、神々し過ぎて焼き尽くされてしまいそうな気がする」
パロ聖王家に属するとは言え魔道の造詣は皆無、極めて正常な感覚を保つ誠実な武人。
勇敢なベック公も流石に、足を踏み出しかねた。
武人に似合わぬ躊躇を見せ、僅かに後退する聖騎士団の大元帥。
従兄弟の心情を慮り、ナリスは虫も殺さぬ優しい笑顔を見せる。
「謝らなければなりませんね、ファーン。
全く当然の反応です、私が迂闊でした。
レムスに憑依した竜王を見た際、心理的な傷を負った筈ですからね。
古代機械を見るのも初めてですし、拒絶反応が生じるのも無理はありません。
少しだけ待っていてくださいね、ファーン。
数タル後には追い返され、戻って来ますよ」
ヴァレリウス以外の魔道師は散り、周囲に結界を展開。
ベック公は不安を顔に湛え、扉の前に残った。
ナリスが先導を務め共同研究者ヨナ、パロ最強の魔道師が同行。
古代機械の探究者ナリス、ヨナは慣れた様子で歩を進めるが。
ヴァレリウスは表情が固く、内心の緊張が透けて見える。
水晶の様に透き通り、多彩な光が縦横に疾
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