薄明
謎の病状
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てくれる。
小人物は何でも自分でやりたがり、俺は何でも出来るのだぞと自分の能力を誇示する。
そんな事をすれば有能な人間は皆、離れて行ってしまうよ。
当然だね、自分の有能さを発揮する機会を悉く奪われてしまうのだから。
無駄話はこれくらいにしておかないと、気が付いたら朝まで喋り続けてしまいそうだ。
私の悪い癖だね、これはと見込んだ人物が傍にいてくれると止める事が出来ない。
面白い玩具に夢中となり、幾ら叱りつけても眠りたくないと駄々を捏ねる幼児と一緒だね。
良くリギアが私を叱る時に用いた比喩だが、全く其の通りだよ。
全然喋り足りないが貴方の忠実な友、マルコに寝所へ連行して貰わないといけないね。
明朝またお喋り出来るのを楽しみにしているよ、親愛なるイシュト」
ヴァレリウスの指示を受け、部下の魔道師が黒蓮の粉を準備。
ゴーラ王の愛飲する火酒に混ぜ、熟睡させる。
ナリスと魔道師全員が闇の中に姿を消し、閉じた空間を経て急行。
昏々と眠る黒太子スカール、ベック公ファーンの前に現れるが。
土気色の顔を覗き込み、アルド・ナリスは息を呑んだ。
「ここまで衰弱している、とは思わなかった。
予想を遥かに超える、一刻も早く治療を施す必要がある。
ノスフェラスで得た病は完治した、と思っていたのに」
知らぬ間に魔の胞子を植え付けられ、ゾンビーと化す所であった魔道師。
ヴァレリウスの額に冷たい汗が流れ、悪寒と戦慄が背筋を駆け抜ける。
「何と言っても闇の司祭、グラチウスのやる事ですからね。
イェライシャ老師が魔の胞子を除去してくれたから、助かりましたけどね。
ベック公と同様、私も餌食になる処でした。
黒魔道師のやる事には皆、必ず裏がありますからね。
相手の利益にもなるのだから、協力者である自分に害が及ぶ事は無い。
そう考えるのは、大間違いです。
人を騙して楽して甘い汁を吸っておきながら、利用した人間を不幸のどん底に突き落とす。
それが黒魔道師の本性、得意技ですよ」
ヴァレリウスの呟き、拭い切れぬ恐怖の籠った述懐に反応。
アルド・ナリスが振り向き、灰色の瞳を覗き込む。
豹頭の追放者にも劣らぬ鉄面皮の美貌が微笑も、冷酷《クール》な声を発する。
「どういたしまして、我が敬愛する導師《シャダイ》様。
有難い御教訓を頂戴したが、私に対する誹謗中傷かね?
胸に響きますよ、痛い程に」
ヴァレリウスの顔から音を立てて、大量の血が引いた。
蒼白となった顔色が急変、動転して泳ぐ瞳と同じ灰色に染まる。
「そんな事、言ってません!
どうしてそう、ひねくれた受け止め方をするんですか!?」
「痛切に胸を貫く鋭い指摘、私の悪い癖を的確に表現する素晴らしい詞だと
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