根上碧海さんは魔王になりたい!
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一以上じゃなけりゃ駄目なんだろ?」
萩島はすっかり飲み終わった缶ジュースの缶を転がしながら拗ねたような態度をとる。
「うん、でも、不可能じゃない、そうでしょ?」
槇原が萩島の肩を撫でる、そして、それを見ていた烏も口を開いた。
「――そうそう、お前さんが無理でもわしらがおるわい、お前さんは自分を信じてダイスを振れば良いんだ、たったそれだけの事よ」
「二人とも・・・」
萩島は缶を転がす手を止め、前を向いた。
「――どうするの?やる?やらない?私はどっちでも良いけど?」
冷ややかな根上の言葉が萩島の決意を決めた。
「――やるぜっ! さっさとそのサイコロをよこしてくれ、絶対に成功させてやる」
根上から差し出された二つのサイコロをがっちり握り締め、萩島は祈った。
このまま策が何も浮かばなかったら全員ゲームオーバーになってしまうかもしれない、ひょっとしたら思考時間に時間制限があるかもしれないからだ、それはGMが宣言するべき事なのだろうが、宣言しない事だってあるだろう、これからいきなりボスと戦う事になるだろうけど、自分が与えられた物はゴミクズという名前と神が懸かった運の強さだけ、恐らく戦闘では何も役に立てないだろう。
――――ならば、この運を用いて出来る事をしたい、それがRPG(役割を全うする遊戯)の醍醐味だから。
「ダイス・ロール――――ッ!」
萩島は二つのサイコロを回すように机の表面に転がし落とした。
萩島の視界が白く染まった、サイコロしか最早見えるものは無い、時折見える鶴の頭頂部のとような赤い点だけが他に残っている色素だ、光景が非常に鈍く飛び込んでくる、断続的にサイコロの目が変わり、それが目に飛び込んでくる。
刹那の時間が永遠とも思える時間として流れ、サイコロはゆっくりとその回転速度を落としていく、一、二、三、回転は止まり、サイコロの目がはっきりと萩島の双眸に映る。
目は両方とも・・・。
「――五かけるニィ、ふふん、十たす二十九いこーる三十九、アンタの負けよ」
根上はその後、でも、と続け、
「――惜しかったから、思いつきはしたけど実行する時間が無かった事にしてあげるわ」
と、呟いた、しかし、サイコロを転がした本人は根上の言葉なんてもう聞いてはいなかった、まるで本当にその世界の住人のように萩島は慟哭する。
「糞ッ! みんな、罠は中央の石筍にしか仕掛けられていない! 気をつけろ、きっと何か・・・」
「――ゴミクズがそう言い掛けた時、中央の石筍が低く轟く雷鳴のような地響きと共に天井から落ちてきた、石筍は深く乳白色の地面に突き刺さり、天井からは無数の鍾乳石が降り注ぐ、さあ、冒険者三人、アンタ達はどうする?何か行動を起こすなら聞いてあげる」
「それじゃあそうだな、わしは背中の刀を振り回し、落ちてくる石を
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