暁 〜小説投稿サイト〜
豹頭王異伝
薄明
黒幕の暗躍
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

 グイン独特の捻くれた面白がり方、ユーモアに溢れる切返しが緊張を解き空気が和む。
 闇色の瞳を一瞬、綻ばせ感謝の意を示すナリス。
 何時に無く真剣な表情で豹頭の追放者を見詰め、言葉を紡ぎ出す。

「気を遣って戴き感謝に堪えませんが、古代機械はパロ聖王家の所有物ではありません。
 自らが判断を下す事を禁じられている故に代行者として、パロ聖王家を選んだに過ぎない。
 代行者の命令に条件付きで従うのは、本来の所有者が現れるまでの間のみと定められていた。
 本来の主人《マスター》が現れた今、パロ聖王家は其の役目を終えたのだと私には思えます。
 次席管理者《セカンド・マスター》の認定を取り消されても、仕方が無いと申せましょう。
 3千年に渡り操作を許されていたパロ聖王家が、どれだけ理解していたかを考えますとね」

 先刻と一転し笑みが消され、黄玉《トパーズ》色の瞳が考え深げに瞬く。
 暫し沈黙の後、鋭い牙を覗かせる猫族の唇が動いた。
「いや、其の様な事はあるまい。
 古代機械が今も尚健在であるのは間違い無く、パロ聖王家が代々保護して来た結果だろう。
 パロには超人アレクサンドロスの創った魔道師の塔、対黒魔道の組織が残り竜王に抗している。
 キタイ王家と異なり聖王家は中原随一の魔道師ギルド、白魔道師を重用した為に滅亡を免れた。
 フェラーラの守護神と聞く大蛇アーナーダが間接的に、アウラ=シャーの神殿を護った様にな。
 ホータンを護る四面神像と四巨塔もまた、王宮の地下に潜む星船の警護者だったのかも知れぬ。

 それに古代機械は、俺に『失望』したのだ。
 精神接触を行ったナリス殿には、お分かりいただけると思うが。
 頭の中を引っくり返され、記憶を突き回されて走査された様に感じた。
 失望した筈の古代機械が何故、俺を《ファイナル・マスター》と言い張るのか。
 正直、全く理解出来ぬ。
 今後も色々とパロ聖王家の知見、ナリス殿の御知恵を拝借せねばならぬと思っている」

「これはまた大層、吟遊詩人の如き私の妄想を買い被っていただいた様ですね。
 あの生意気な古代機械と話が出来るだけでも幸運、と思って想像を膨らませてみますよ。
 古代機械も尽きせぬ興味を掻き立てますが、大導師アグリッパの言葉も興味深いですね。
 竜王にも到底対抗出来ぬ力の場となれば当面の敵、謎の王太子アモンにも通用するでしょうし。
 それに私の要請に応えて参戦してくれた草原の鷹、スカールは何としても救わねばならない。
 どうせまた治療には貴方の許可が必要だ、と古代機械は言い張るのでしょうけどね!」

 黄金に黒玉の戦士は困惑の態を装い、豹頭の超戦士に似合わぬ困った貌を見せた。
 猫類の丸い瞳を泳がせて見せるが、笑いを堪えた内心を細かく震える長い髭
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ