暁 〜小説投稿サイト〜
豹頭王異伝
邂逅
豹頭王の魔力
[1/4]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 イシュトヴァーンは魔道師を召抱えておらず、怪異に対処する術を持たぬ。
 スナフキンの剣も無く、巨大な竜の襲撃を退ける手段は無い。
 竜の顎が開き、鋭利な牙の群が露出。
 兵士達は恐怖を煽られ、随所で悲鳴が響く。
 ゴーラ軍の指揮系統は一瞬で麻痺、恐慌状態(パニック)に陥った。

 濃霧を掻き分け現れた竜の牙が一閃、アルド・ナリスを引き裂くかと見えた其の時。
 ナリスの裡に異様な感覚が生じ、グインとの精神接触(コンタクト)が再現された。
 豹頭の超戦士が秘める無尽蔵の活力(パワー)、膨大な星々のエネルギー。
 人間の許容量を遙かに超える黄金色の精気、光と熱の激流が身体中に漲る。

 ヴァレリウスは咄嗟に身体が動き、アルド・ナリスを背後に庇ったが。
 己の魔力を眼前に迫った竜に叩き付け、爆発させる寸前。
 華奢な手が伸び、身を挺して盾となった魔道師の肩を掴んだ。
 ナリスの掌を通じ黄金色の精気、想像を絶する膨大な《パワー》が流れ込む。

 豹頭の戦士を源とする激流は結界を通じ、数十名の魔道師に波及。
 ヴァレリウスはまたしても貧乏籤を引き、最大の負荷を受ける格好となったが。
 見習い魔道師も含め、全員が未曾有の衝撃に耐え懸命に意識を保持。
 ナリスの右手が閃き銀色の愛剣、レイピアを投槍の要領で叩き付ける。
 上級魔道師達が咄嗟に動き、五芒星の魔法陣を敷いた。

 4人は荒れ狂う爆流の渦に耐える最強の術者、ヴァレリウスを支援。
 アルド・ナリスの掌を通じ精神接触を経由の接触心話、大音声が脳裏に轟く。
「受け取れ、ヴァレリウス!
 俺の《パワー》を操り、黒魔道の術を破れ!!」

 エネルギーの奔流は精神接触の相手を中継して、パロ最強の魔道師に殺到。
 許容量を遙かに超える強力な気と念、波動に魂を消し飛ばされそうになった。
 ヴァレリウス、ロルカ、ディラン、ミード、エルムの顔も苦痛に歪む。
「気を失うな、魔力が暴走すれば何もかもお終いだ!」
「《自分》の意識を維持するだけで良い、気を集中させろ!」
「解ってる、そのまま、俺を支えてくれ!」

 グインから届く無尽蔵とも思える膨大な念波、生の《力》は想像を遙かに超える。
 これだけの熱量を制御する事は、世界三大魔道師にも不可能ではないかと思われたが。
 必死で念を凝らす魔道師達は気を喪わず、己の許容量(キャパシティ)を最大限に活用。
 各人が精神を集中し意識を焼く尽くす程に圧倒的な魔力、思念波の制御を試みた。

 全員の支援を得た魔道師は重圧を撥ね退け、膨大な《パワー》を懸命に制御。
 灰色の眼に殺到する巨大な竜の頭が映り、圧縮された黄金色の精気を掌から放出。
 爆発的な真紅の衝撃、強大な念動力の奔流が空気を過熱させ猛烈な炎に昇華する。

[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ