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豹頭王異伝
邂逅
豹頭王の魔力
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 紅都アルセイスを襲った業火、火の女神レイラの如き火焔が渦巻き一直線に飛翔。
 炎の渦を纏う輝ける真紅の竜と化し、ナリスの投じた愛剣に追い付き炎の紋章を刃に刻む。
 白い濃霧に包まれた謎の巨竜、真紅の炎を纏った竜の剣が真正面から激突。
 紅玉《ルビー》の様に輝く赤い瞳が輝き、謎の咬竜は閃光を撒き散らし虚空に消えた。


 濃密な霧も猛烈な爆風に吹き飛ばされ、跡形も無く消え失せている。
 ゴーラ軍を襲った悪夢、巨大な竜は嘘の様に消え去り何の痕跡も見当たらぬ。
 太陽の光が燦燦と降り注ぎ、頭上には見渡す限り青い空が広がる。
 パロの指導者を襲った黒魔道の術、試練は克服され全員の緊張が一気に緩んだ。

 ゴーラ軍の兵士達は安堵の息を吐き、互いに顔を見合わせる。
 パロの魔道師達も無言ではあるが、心話が交錯し念が飛び交う。
 注視を浴びながら数タール先まで歩み、優雅に膝を落とす聖王家の貴公子。
 ナリスは見慣れぬ装飾物を拾い上げ、涼しい顔で周囲を眺めた。


「これが、魔術《マジック》の種か。
 首飾り《ペンダント》を触媒として魚竜の一種、咬竜を実体化させたのかな?
 紅玉《ルビー》を嵌め込み、燃える様に輝く魔族の赤い瞳を模しているのだね。
 ケイロニア軍には気の毒だったが、新たな犠牲者が出る事は無いだろう」

 ナリスは独り言の様に呟き、従者の警告を無視して謎の宝飾品を懐に収めた。
 不可思議な衝動に駆られ、咄嗟に投じた銀色の愛剣も拾い上げる為に手を差し伸べるが。
 レイピアの刀身には見慣れぬ模様が刻まれ、異様な波動を漂わせている事に気付き背後を振り返る。
 ヴァレリウスは無言の問いに応え、慎重に掌を翳し銀色の剣が纏う波動を解析。

「我々には未知の《気》ですが、強烈だな!
 まるで太陽の様に燃え盛っていて、心の《眼》を灼き尽くされそうな気がします。
 強いて言えば糞爺、もとい、グラチウスの相棒が使う魔力に波長が近いかもしれません」

「花の精霊を統べる風魔神の眷属イタカ女王の愛人、快楽の都タイス由来の精霊と自己紹介した淫魔の事?
 グインの放出した星々のエネルギー、黄金の精気(エナジー)を喰らって破裂した後の事は知らないね。
 ユリウスが魔王子アモン、或いは同類を見た記憶も気になるけれど。
 超古代の暗黒大陸カナン由来の刻印であれば、古代生物の魔力に波長が近いかもしれないね」
 ナリスは無造作に華奢な掌で愛剣の柄を握り、軽々と振り廻してみた後で鞘に納めた。


「グイン陛下の援護射撃ですが、途轍もない《パワー》でした!
 あれだけのエネルギーを中継したのに何故、ナリス様は平気なんです?
 あの濃霧からは藻の怪物と同様、イーラ湖の匂いが嗅ぎ取れました。
 湖の底に残っていた竜王
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