AlFe
[2/35]
[1]次 [9]前 最後 最初
りとした体型の男は廊下の真ん中まで来ると、両手を膝について息を整え始めた。その男はやがて膝から手を離し、その離した手を自分のかぼちゃパンツの中に突っ込み、すっかり汗でずぶぬれになったハンカチを取り出すと、いそいそと額の汗を拭い、それからまたそのハンカチをパンツの中に突っ込み、またばたばたと走り始めた。
(よし、今の内だ!)
その男の姿がすっかり遠くへと無くなってしまってから、アルは万が一にでも男に気づかれないよう、そろりそろりと足を進め、非常にゆっくりとした動作で物置から顔を出した。辺りは猫の鳴き声一つ聞こえない、静寂に包まれていて、人の気配はまるで無い。それもそのはず、今日はこの国の設立記念日、この国の王、そしてその従者、国民、誰もがこの国の誕生日に浮かれ、城内は殆ど人が居なかったのだから、大きな国の城の中に人が居ないのは当たり前の事だった。
(うん、これなら大丈夫、誰にも気づかれずに城の外へと出られる!)
アルは嬉しそうに固く結んでいた口を解き、にやっと笑ってそのまま鈍色の廊下を走り出した、廊下は一人の少年が走りぬける足音と、時折響く歯車の音だけがこだました。
城内の造りは比較的シンプルだ、長く全てが金属で作られた廊下に沿って様々な部屋が設置されている。それ以外はというと、城の上層部へ向かう為の螺旋階段が廊下の延長線上に二つ、それぞれ対になるように有って、後はただただ、大きな正門が一つ螺旋階段の間にあるだけ。
アルはその長い廊下を風のように走り抜けて、正門まで辿りついていた。
「(――はぁ、はあ、王子、王子はここに居らぬか〜)」
アルが長い廊下の角を曲がろうとしていた時、あのずんぐりとした体型の男の声が角の向こう側から響いてきて、アルは角にさっと背中をくっつけ、身を隠した。ずんぐりとした男の声に、正門の見張り番とおぼしき男の声がめんどくさそうに答える。
「(大臣殿、今日も王子と追いかけっこですか?今日も王子はここには来ていませんよ。ああ、それとも、兵士長の私が悪戯小僧を一人でも通すとでもお思いですか?)」
兵士長の言葉を聴いた大臣が早口で兵士長にまくし立てる。
「(追いかけっこなんて優しい事じゃないわっ!今日は大事な国設立記念日だぞっ!?国民全員が王子の新たな魔法と剣術を楽しみにしているというのに、王子ときたら『そんな堅苦しい事は嫌だ!』と言って稽古部屋を飛び出してしまったんだ!ああ、もう、どうすれば良いんだ!?これじゃあ私の立場が危ういうじゃないか!なあ?おい!本当に王子がどこに居るのか知らないのか?)」
金属を擦り合わせたような大臣の声に、兵士長はうんざりしたような声で
「(そいじゃあ早いところ探した方が良いんじゃないですか?少なくとも王子はここを通っていませんし、私は王子が居る場所を知りません、こん
[1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ