AlFe
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プロローグ〜木と鉄の国
生けとし生きる者達全てを照らし出す眩い日差しが山の表面を黄金色に照らし、目を覚ました茶色い兎達が楽しげに跳ね回り、その兎を狙って鷹が蒼く白んだ大空を飛び回る頃、一人の旅人がその山の頂上へと辿りつこうとしていた。
「――もうそろそろか・・・」
旅人はこげ茶色に煤けた長いコートについたおだもみの草を軽く払って、腰に巻きつけたポーチから小さな真鍮の双眼鏡を取り出し、頂上へ着いた時に現れるであろう素晴らしい景色に備えた。長く続いた旅路も今日で最期、明日からは自分が永住すると決めたその国で新たな生活を送るのだ。旅人は自身の胸の奥が熱くなり、高揚するのを感じた。
ゆっくりと脚を踏み出して、一歩、そしてまた一歩、旅人は山を登っていく、一度、頂上付近で休憩をとった。重たい荷物を降ろし、鞄から小さな携帯食料を二つ取り出して、それを頬張った。口いっぱいに無機質な味が広がり、こぼれた欠片は足元を這う蟻達が持っていった。旅人は口を動かしながら、水筒の蓋を開けて、一滴も水を溢さぬように気をつけながら飲んだ。
ささやかな食事を終えた後、数十分だけ休み、旅人は再び重たい荷物を背負って立ち上がった。先ほどまで寒々としていた空気がすっかり昇りきった太陽に温められ、とても心地が良くなっていた。
「後少し、後少しだ――」
旅人は自身に言い聞かせるように呟きながら、一歩づつ山を登る。彼が山頂に着いたのは、それから数分後の事だった。
山吹色に輝く大地、そして山々を彩る美しい紅葉に目を奪われる。だが、そんな美しい景色よりも、それを凌駕するほど、その国は綺麗だった。
洗練された白い城壁、そしてその白い城壁を護る為に立ち並んでいる鋼鉄の巨人達。彼らの足元ではせかせかと黒い小さな影が走り回っている。旅人は双眼鏡の丸い視界から、その国をじっと見つめていた。
「--あれか・・・想像以上に綺麗な国だな、流石機械と自然が豊かな国なだけある、俺もあの国で生活するんだ・・・」
旅人は顔をほころばせ、双眼鏡から目を離した、なんとか日没までには国の中に入りたい。旅人は手に持った双眼鏡を再び腰のポーチにしまうと、下山する為にまた歩き始めた。
第一章〜鋼鉄の王子
「(王子〜、王子!何処にいらっしゃるんですかー!?王子ーっ!)
豪華な装飾品で飾られた鈍色の廊下を、ずんぐりとした体型の男がその小さな脚を懸命にばたつかせて走り回っている。アルはその光景を廊下の真ん中のちょうど部屋と部屋の間にある掃除用具等を入れるような小さな物置の陰に隠れて見つめていた。
「(王子〜、早く稽古を終わらせないと、お父上がお怒りになりますぞ〜!?)」
ずんぐ
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