第六章
[8]前話
「それ故にな」
「そこまで言うか、ではな」
「うむ、曹操殿には申し訳ないと伝えてくれ」
「そうする」
張遼は関羽との話が終わるとすぐに曹操に彼との話のことを全て話した。曹操も彼からその話を聞いて静かに言うだけだった。
「わかった」
「それでは」
「関羽を行かせてやるのだ」
劉備の下にというのだ、袁紹の陣営にいる。
「当然劉備の妻子、あの者の兵達もだ」
「共にですか」
「行かせてやれ、いいな」
「わかりました」
こうしてだった、関羽は劉備の下に向かうことになった。そうして曹操に礼を述べて彼の本拠地許昌を後にした。
曹操は主な家臣達と共に彼を見送った、それからだった。
残念な顔になってだ、こう言ったのだった。
「残念だ、しかしだ」
「はい、あそこまでの信念ですと」
「仕方ありませぬ」
郭嘉と張遼がその曹操に話す。
「ですから」
「もうここは」
「わかっておる、だから行かせたのだ」
曹操ももう諦めている、そのうえでの言葉だ。
そしてだ、こうしたことを言ったのだった。
「だがな」
「だが?」
「だがといいますと」
「あの者はこのことでも名を残す」
こう言ったのだった。
「強さだけでなくな」
「あれで智もありますし」
「そちらも見事ですから」
「そうじゃ、だからこそ欲しかったがもう言っても仕方がない」
関羽の心を掴めなかった、それではだった。
「わしが出来るのはあの者を無事に送らせてやることだけだ」
「そうなりますな」
「ここは」
「わしも信義は守る」
そこは絶対、と言う曹操だった。
「行かせてやれ、無事にな」
「わかりました」
「それでは」
郭嘉と張遼が曹操に応えた、そしてだった。
曹操は朝廷に戻り政に入った、もう振り向くことはなかった。ただ彼はこの時手形を出すことを忘れていて関羽はその為千里の道を行く間五つの関を越える際に死闘を繰り広げ六人の将を斬ることになった。このことはまた別の話でありここでは割愛するが彼はそれでも劉備の下に戻りその侠を守ったのであった。
血路へと 完
2014・11・27
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