第二章
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「そうはなびかぬか」
「そして、ですね」
「そうだ、そなたをここに呼んだ理由はだ」
「その関羽殿をどうして殿の家臣にするか」
「私に忠義を尽くしてくれるのかとな」
「まず関羽殿はです」
郭嘉はその関羽自身のことからだ、曹操に話した。
「あくまで忠義一徹で」
「心が動くことはだな」
「容易にはです」
「そうだな」
「しかもです、赤兎馬は呂布の馬でしたな」
「うむ」
「その前は董卓の馬でした」
このことは天下によく知られている、董卓が呂布を彼の義父丁原を裏切り自分の下に来させる為に贈ったのだ。
「その時董卓は呂布に赤兎馬だけ贈っていませんな」
「財宝も多く贈ったな」
「はい、呂布は裏切りを常にした男でしたが」
「赤兎馬だけではか」
「決め手にはなりましたがなびかなかったかも知れません」
「財宝もあってこそだったというのだな」
「はい、ですから」
それで、というのだ。
「財宝も贈りましょう」
「そうすべきか」
「是非」
こうしてだった、曹操は関羽に多くの財宝も贈った。だが関羽はその財宝をだった。
自身が護っている劉備の妻子達に献上した、かなりの財宝だが自分が受け取ることは一切なかった。それを見てだった。
曹操はあらためてだ、郭嘉に言った。
「自分ではだ」
「はい、金や銀の一粒でさえ」
「自分のものにしなかった」
「富に欲はないのですな」
「ただの忠義者ではないな」
「その様ですな」
「さらに気に入った」
曹操はここで笑みを浮かべてこうも言った。
「それでこそよ」
「家臣にしたいのですな」
「才があれば多少のことはよい」
曹操の人の集め方だ、彼は才ある者は例え多少素行が悪くとも重く用いるのだ。だがやはりそれでもなのだ。
「だがそれで心根がよいとな」
「さらにですな」
「よい」
やはりそれに越したことはないというのだ。
「だからこそな」
「尚更に」
「あの者が欲しくなった」
「では次は」
「服を贈ろう」
今度はこれだった。
「親睦の意味でもな」
「そうされますか」
「絹の上等の服を用意せよ」
そしてその服をというのだ。
「あの者に贈る」
「さすれば」
郭嘉も曹操のその案に頷いた、こうしてだった。
関羽に服も贈られた、しかしこれもだった。
関羽は劉備の妻子に贈るだけだった、やはり自分では受け取らない。これで曹操はまた郭嘉に言うのだった。
「さらに気に入った」
「物欲もないのですな」
「そうじゃな、実にな」
「しかしこれで、です」
「贈りものをしてもな」
「関羽殿はなびきかせん」
「うむ、そうじゃ」
このことは間違いないとした、それでだった。
曹操は郭嘉にだ、こう言ったのだった。
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