第一章
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血路へと
関羽雲長は劉備玄徳の家臣である、もっと言えば義兄弟の間柄で生死を共にすると誓い合った仲だ。だが。
今彼は曹操孟徳のところにいる、それは何故かというと。
劉備が曹操と争い治めていた徐州を追われたからだ。ここで関羽は劉備だけでなくもう一人の義兄弟張飛翼徳ともはぐれてしまった。それで彼は今は曹操に降り彼の下にいるのだ。
彼は曹操にだ、降る時にこう言った。
「それがしはあくまで劉備様の家臣です」
「だからか」
「はい」
それが為にというのだ。
「貴殿にはお仕え出来ません」
「そなたの才が欲しい」
曹操は関羽のその赤顔の鳳眼を見つつ言った。
「是非共な」
「そのお言葉は感謝しますが」
「それでもか」
「はい」
あくまでという言葉だった。
「劉備様がご無事ならば」
「劉備のところに戻るか」
「そうさせて頂きます、若し」
「私がそなたの首を打とうとも」
「そうさせて頂きます」
「わかった」
ここまで聞いてだ、こう返した曹操だった。
「約束しよう、そなたの命は取らぬ」
「それでは」
「劉備が生きていて居場所がわかればな」
その時はというのだ。
「あの者のところに戻るがいい」
「そうさせて頂きます」
「そうか、だがだ」
ここでだ、曹操は関羽に対してこうも言ったのだった。
「私はそなたが欲しい、だからだ」
「それで、ですか」
「そなたの心変わりを誘う」
こう言うのだった。
「何としてもな」
「では」
「そうしてそなたを手に入れてみせる」
つまり己の家臣にしたいというのだ。
「そなた程の者、我が家臣になればこれ程心強いことはないからな」
「しかし私はです」
「そうだな、だが仕掛けさせてもらう」
こう言ってだ、曹操は実際にだった。この時から関羽に対して色々と仕掛けるのだった。
まずはだ、関羽の馬が彼の大柄さ故に乗せているうちに痩せているのを見てだ。ある馬を贈ったのだった。
「この馬は」
「そうだ、これまで呂布が乗っていたな」
曹操は関羽にその馬を見せて言うのだった。
「赤兎馬だ」
「あの名馬をですか」
「そなたに贈る」
赤い大きな馬だった、身体も見事だ。
「喜んで乗ってくれ」
「さすれば」
こうして曹操は関羽に赤兎馬を贈った、関羽はそのことに対して深い感謝の意を述べた。だがそれでもだった。
関羽は曹操の家臣になろうとしない、それでだった。
曹操は軍師の一人である郭嘉にだ、こう問うた。
「赤兎馬を贈ったが」
「はい、関羽殿はですね」
「私の配下になろうとしない」
「そうですな」
「やはり堅いな」
「あくまで劉備玄徳に忠義を尽くすつもりですね」
「見事な忠義だ」
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