第五章
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マリアはすぐに出てだ、こう彼女に言った。
「わかってるわよ」
「スコットランドが・・・・・・」
「残念だったわね」
「正直かなり落ち込んでいます」
「そこに何があるの?」
マリアは先程まで肌を重ねていた夫を横目で見つつキャロルに問うた。
「あんたの部屋には」
「はい、ラム酒とフィッシュアンドチップスとナッツです」
「その三つね」
「あります」
「すぐにラム酒飲んでね」
「後の二つを肴にして」
「飲んでね」
そうして、というのだ。
「忘れなさい、いいわね」
「わかりました」
「じゃあ私今主人と一緒にいるから」
何処で一緒にいるのかはあえて言わないのだった。
「また明日ね」
「はい、お会いしましょう」
「そういうことでね」
「お休みなさい」
こう二人で携帯で話してだった、そのうえで。
二人はこの日は話を終えた、マリアは携帯を切るとそれを元の場所に戻して自分から夫に抱きついた。そして次の日にだ。
多少寝不足そうだがいつもの調子のキャロルにだ、こう言った。
「気を取り直したみたいね」
「はい、飲んで」
「それは何よりよ」
「すいません、夜中に」
電話をかけたことをだ、キャロルは謝った。
「つい、どうしても」
「それはいいのよ、あんたが気を取り直してくれたら」
「そうですか」
「そう、気にしないでね」
「有り難うございます」
「けれど。キャロルって」
電話の話を終わらせてからだ、マリアはキャロルにこうも言った。
「普段はとても明るいけれど」
「それでもですか」
「すぐに凄く落ち込みますね」
「実はそうなんです」
自分でも言うのだった。
「結構」
「そうよね」
「はい、けれどすぐに気を取り直して」
そして、というのだ。
「元気になります」
「そうみたいね」
「結構疲れる性格かも知れません」
「ううん、キャロル自身がね」
周りはともかくとして、というのだ。
「すぐに上機嫌になって普段は明るいことはいいけれど」
「逆にすぐに落ち込むことはですね」
「それは大変ね」
こう言うのだった。
「キャロルにとって」
「そうですよね」
「性分だからね、それは」
マリアは達観した様にこうも言った。
「だからね」
「それで、ですか」
「ええ、仕方ないわ」
キャロルのその性格はというのだ。
「だからここはね」
「どうすればいいでしょうか」
「落ち込む時は誰でもあるから」
このことは仕方ないとした、人生は晴れの日ばかりではない。雨の日もまたあるからそれで仕方ないと言ったのである。
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