第20話〜前へ進むために〜
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・・“自分”から逃げているようじゃ」
アリサに触発されるように、今度はリィンが胸中を語っていく。
ケルディックでの実習、夕食後に語ったトールズ士官学院の志望動機。
あの時は自分を見つけると格好のつけたことを言ったが、実際は家族からも自分自身からも逃げているのかもしれないと不安に駆られることがある、と。
「・・・その、ご家族とあまり上手く行ってないの?」
そうリィンが素直に打ち明けると、少し間をおいてからアリサは遠慮がちにそう訊いた。
「いや、全部・・・俺自身の問題なんだ」
血の繋がりがなくとも、両親や妹には慈しまれている。自分自身が彼らに負い目を感じて敬遠しているに過ぎないのだ。そう思ったリィンはアリサの言葉をやんわりと否定した。
「でも、そういう風に言えるってことは・・・多分、前に進むきっかけが掴めたってことでしょう?」
「あ・・・」
「ふふっ、もらった言葉をそのままお返しするわ。いつもどれだけ恥ずかしい言葉を臆面もなく言ってるか・・・少しは自覚するといいんじゃない?」
他人に悩みを打ち明けるには、それなりの勇気がいるし、気持ちの整理がついていなければならない。現実から目を背けるだけだった自分も、少しずつ前へ進めていることにリィンは気付かされた。
「参った、一本取られたよ。学院に入ってZ組のみんなや、同級生に先輩たちに出会って・・・こんな風にみんなと同じ時間を過ごすことで、俺も前に進んでるんだよな」
「ええ、きっとそうよ。だから・・・こんな風に、みんなと?」
リィンの視線の先を追い、振り返ってアリサが見たのは、ケインにアレス、ガイウスとエマ。Z組リメインズとの邂逅である。リィンたちを心配して様子を見に来たようだ。
「あー、えっと。二人とも、今日は夜空が綺麗だよな」
「ええ、そうね・・・って、そうじゃないわよ!あなた達、いったい何時からそこにいたの!?」
さり気なく誤魔化そうとしたケインの言葉に流されかけたが、寸前で踏みとどまってアリサは鋭い指摘をする。
「へぇ、聞きたいのか?」
「うっ・・・やっぱりいいわ」
「『でも、この星空を見上げていたらどうでもよくなっちゃったわ』だったかな?」
「いいって言ってるでしょう!?」
「ふむ、前に進むきっかけか・・・私はあの言葉に感銘を受けたのだが」
「アレスもやめてええっ!あれはリィンの恥ずかしい台詞をそのまんま返しただけだから!」
「ふふっ、そんなに恥ずかしがらなくても。思わずジンと来ちゃいました」
「ああもう!何で私が一番、恥ずかしい人になってるの!?」
「アリサが恥ずかしい人とか、今更すぎr」
「そこ、うるさい!」
リメインズの生暖かい視線とご丁寧な感想
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