第20話〜前へ進むために〜
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ンはなんてバチあたりものを造ったのかと帝国軍へ引き渡すのを躊躇していた。しかし、イリーナはルーレの領主、ログナー公爵から帝国軍の有力人物に至るまで、ラインフォルトグループの大株主全員を味方につける。そうして、イリーナが新会長へと就任し、貴族派・革新派の意を受けて、グエンは退陣したそうだ。
「お祖父様は、私を残してラインフォルトを去った。味方だと思っていったシャロンも、雇い主である母様に従うだけだった・・・それが、五年前の出来事よ」
声こそ落ち着いているが、横から見えるアリサの表情は非常に暗い。
母、イリーナの行動によって祖父、グエンが裏切りにあった。自分の家族がそんな形で離れ離れになってしまえば無理もないだろう。
「・・・アリサは、自分の“家族”が壊れてしまったことに納得がいかなかったんだな?」
「そうね・・・実の親を陥れた母様も、それをただ受け入れたお祖父様も、あれだけ優しかったシャロンが何も言ってくれなかったことも、私は納得がいかなかった」
アリサの方を見てそう言うと、彼女は頷き、まっすぐ前を向いたまま自身の心境を語る。
「ラインフォルトの存在が、私が思っているより遥かに巨大で、その重さの前には家族の絆なんて意味がないなんて絶対に認めたくなかった」
だから実家を出て、士官学院に入ったのかもしれない、と。ただ結局母から、家から逃げることもできず、心配していた祖父もノルドの地で第二の人生を楽しんでいて、結局自分は何をしていたのかと気が滅入っていたらしい。
「でも、この星空を見上げていたらどうでもよくなっちゃったわ」
「そうか・・・やっぱり、アリサは強いな。こうして色々話してくれたってことは、多分、まえに進むきっかけが掴めたってことだろう?」
再び寝そべり、アリサとともに星空へ手をかざしながら、リィンは彼女を純粋に賞賛した。顔だけをこちらに向けた彼女は穏やかに微笑んで彼の言葉を肯定する。
「それは士官学院に入ったからだと思う。Z組のみんなに、部活のみんな・・・本音で向き合える仲間と出会えたから私は強くなれた。だから、ありがとう。心配してくれて・・・空を見上げろと言ってくれて」
「はは・・・どういたしまして」
お礼を言うアリサが、今まで見てきた中で一番穏やかな笑みを浮かべているように思えた。どこか吹っ切れたような様子だ。リィンは不義理をしてはいけないと、一応エマに促されてここに来たと白状しておく。彼女は「その辺は今後の課題ということで」と意味深な言葉を口にするだけだったが。
「そういえば、私を強いって言ってくれたけど、貴方だって色々と頑張っているじゃない?実習ではリーダーとして皆を引っ張ってくれてるし」
「はは、自由行動日に似たような事をしているからな。でも、まだまだだ・
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