第20話〜前へ進むために〜
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ご、ごめんなさい」
「いや、無理もないさ。今日は一日中馬に乗っていたようなもんだから、かなり体力を消耗したんだろう」
危うく転びそうになったアリサの両肩を掴んで支える。午前は南部、午後は北部を馬で駆け回ったため、疲労の蓄積は昨日の比ではないはずだ。
「そんなことも、自分で気付かなかったんだ・・・」
自嘲するようにそう呟いた彼女は、気落ちしているように見えた。
「・・・アリサ。空を見上げてみなよ」
「あ・・・」
「風に当たるんなら、俯いているより見上げたほうがいいんじゃないか?」
「ええ、まったくだわ」
昨日は早く就寝したため気付かなかったが、見上げれば、曇りのない夜空が一面に広がっており、星々が蒼穹の大地を控えめに照らしていた。
その光景で暗くなりかけた気持ちを落ち着かせながら、リィンとアリサは草原へ仰向けに寝そべった。
「・・・8年前だったわ。技術者だった父がなくなったのは」
ほどなくして、アリサが昔を懐かしむように話しを始める。
父の死によって取締役であった母、イリーナが事業拡大に没頭し、家族をほとんど顧みなくなったこと。食事を共にするのも、三ヶ月に一回あるかないかであるらしい。その代わりに一緒にいてくれたのが、グエンやシャロン。
家柄のせいで貴族には疎まれ、平民には特別扱いされ、本当の意味での友達がいなかった彼女に、趣味人であるグエンから乗馬やバイオリンの手ほどきを受け、シャロンからは弓の使い方に護身術、貴族並みの礼儀作法も教わったそうだ。
その一方で、母が会長たる祖父の意向を無視してグループを拡大。
「でも、元々かなり大きな技術工房ではあったんだろう?」
「ええ、鉄鋼や鉄道から戦車や銃のような兵器まで・・・<<死の商人>>と揶揄されるだけのモノ作りはしてきたと言えるわね」
「そうか・・・」
アリサの話に黙って耳を傾けていたリィンであったが、彼女の話が一旦そこで途切れたため、今度は彼から話題を振った。どちらからともなく上体だけを起こし、リィンは気遣うような視線で彼女の顔を見る。
「・・・大丈夫よ。そのこと自体、複雑ではあるけど恥と思ったことは一度もないわ。でも、ここ数年、RF(ウチ)が作ってきたものを考えるとさすがに行き過ぎとしか思えない」
「ここ数年作ってきたもの・・・?」
思い当たる節がいくつかあるが、リィンにはこれだというものが即座に出てこない。心境を知ってかしらずか、アリサは列車砲について話し始めた。帝国東部、ガレリア要塞に2門設置されているその長距離導力砲は、たったの二時間で人口50万のクロスベル市を壊滅させるほどのスペックだそうだ。虐殺にしか結びつかないその兵器を受注したのが、彼女の母であるイリーナ。完成に立ち会った祖父、グエ
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