第20話〜前へ進むために〜
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老の隣にいたラカンが説明してくれた。運搬車は集落に一台しかなく、故障したままでは支障をきたすということを。確かに、今回のように木材を運ぶ時でも、馬に引きずらせる訳にもいかないし、荷車などでは馬の負担が大きい。早急に直す必要があるだろう。
「そうでしたか・・・だったら、俺たちにできることはありませんか?」
食事や実習の課題など、ウォーゼル一家には色々と世話になっているため、何かしらの形で集落に貢献したい。それに、突発的な事態に自ら考え、主体的に行動するという意味で、これも実習の一環だ。そう思ったリィンが助力を申し出た。
「祖父様っ、どうしてこんな所にいらっしゃるんですかっ!?」
再び崖を馬で駆け上がり、巨像から北西の方角にあるラクリマ湖へ。リィンたちはそこにあった木造のボート小屋に来ていた。
ラカンによると、車を修理できる、帝国のご老人が住んでいるとのことだったが、どうやらそれがアリサの祖父だったらしく、大声で驚きを表現した彼女は両目を見開いている。
「フフ・・・まあ検討はついておるじゃろうがあらためて自己紹介と行こうか」
若干興奮気味のアリサを宥め、一同が中央にあるテーブルの椅子に腰掛けたところで、アリサの祖父が自己紹介する。グエン・ライフォルト。導力革命の祖、エプスタイン博士の三高弟の一人にして、ラインフォルトグループの元会長だったはずだ。
「いや、しかし5年も経つと見違えるほど成長したの〜。背はもちろんじゃが、出るところも立派に出て。うむうむ、本当にジジイ冥利に尽きるわい」
こちらの自己紹介も終えると、娘との再会を喜んでいるのか、堂々とセクハラ発言をするグエン。飄々としていて冗談かは分からないが。
そんな彼に、アリサは心配していた旨を伝え、ルーレからいなくなってこの5年間どうしていたのかと尋ねる。5年も前からここで暮らしていたグエンは、しかし一年の半分を帝国や大陸各地で過ごしていたそうだ。
アリサはひとまず納得したようだったが、表情から心配の色は消えていない。
「その、グエンさん。どうやら俺たちの実習についても詳しくご存知だったみたいですね?」
「ふむ・・・確かに突然の来訪にしては、いささか手際が良すぎる」
グエンが実習のことを知っている理由は、アリサの母、イリーナとの連絡にあったらしい。今でもやりとりをしていることが、アリサにとって衝撃的だったのか、驚きで再び目を見開く。
「まあ、必要最低限じゃが。わが娘ながら仕事が楽しくて仕方ないようだからの〜。やれやれ、どこでどう育ったらあんなワーカホリックになるのやら」
皮肉を言う口調はあくまで平淡だが、そこには嘆きが含まれている気がした。
アリサとしても否定できないのだろう。リィンは、眉を伏せて複雑な表情を浮かべる彼女をただ見
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