暁 〜小説投稿サイト〜
バイアーナドレス
第二章

[8]前話 [2]次話
「もう少ししたらこの街でもな」
「ああ、祭りだな」
「祭りになってな」
 それでというのだ。
「余計に賑やかになるぜ」
「そうなるな、それでうちの娘もな」
「うちの娘もだよ」
「もうその時着る服がどうとかで」
「女房と話してな」
「で、俺達はな」
「蚊帳の外だよ」
 父親はというのだ。
「こうした話になるとな」
「女の服の話なんてな」
「男の俺達が言う権利ないからな」
「男は金を出すだけ」
「稼いでな」
「半分は男のお陰で生まれるのにな」
「神様も因果なことしてくれるぜ」
 笑って二人で話すのだった、父親二人は。
 そしてゴンガーザはだ、ペドロにこんなことを尋ねた。
「それで御前さんところの娘さんは何着るんだ?」
「ああ、あれだよ」
「ドレスだよな、やっぱり」
「バイアーナドレスな」
 この服だとだ、ペドロはゴンガーザに答えた。
「決まってるだろ」
「やっぱりそうか」
「ああ、もう女房と二人でな」
「どんな柄のドレスにするかでだよな」
「友達同士みたいに話してるよ、家でな」
「で、御前さんは見ているだけ」
「そして聞いているだけだよ」
 ただそうしているだけだというのだ。
「お金は俺が出すけれどな」
「ははは、俺もだよ」
「御前さんもか」
「男がドレス着るか?」
「女装が趣味だと着るけれどな」
「それでも普通はないな」
「ああ、だからな」
 それでというのだ。
「俺もだよ」
「見ているだけ、聞いているだけでな」
「本当に蚊帳の外だよ」 
 男は、というのだ。父親であっても。
「俺達は俺達で服着るけれどな」
「男の服なんてな」
「何でもないからな」
「タキシード着てもな」
 そうした礼装になってもだ、ちなみに二人は仕事柄そうした服を着ることはない。二人共砕けた感じが売りの店だからだ。実際二人がいるゴンガーザの喫茶店もラフで飾ったものはない。
「男はそれで終わりでな」
「隣のドレスの淑女の方が注目される」
「そんなものだな、世の中」
「男は金を出すだけ」
「そして見ているだけ」
「まあ言い寄ることが出来るな」
 つまり浮気だ、だが。 
 ペドロは浮気についてはだ、ゴンガーザに真剣な顔で言った。
「あれは駄目だな」
「ああ、御前さんも浮気したことあるのか」
「というとあんたもか」
「三年前したさ、ばれないようにしたつもりなんだがな」
「ばれただろ」
「ばれて女房にぎったんぎったんにされたよ」
 浮気の代償として、というのだ。
「殺されるかと思ったよ」
「俺もだよ、五年前な」
 そのペドロも言うのだった。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ