暁 〜小説投稿サイト〜
101番目の舶ィ語
第ニ十話。託された想い
[8/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
と全く現れなくなったり。中学生時代に音央が憧れていた先輩も、すぐに記憶の中に登場しなくなったりして。
そして音央本人は、その人物達がいない事を当然のように受け止めていて、平和に楽しそうに過ごしている。
そう。いなくなっている(・・・・・・・・)という事が当たり前になっているんだ。

「……『神隠し』か?」

「いなくなった方々の事はみんな私が覚えています。ですが、『あの子』は覚えていません。
……きっと知ったら、あの子の性格なら」

『強気を装っているだけで、基本ヘタレだから……壊れてしまいかねないな。音央なら』

「強気に見えて、実際は繊細だから……真実を知ったら壊れてしまう、か」

「はい。あの子が頼りにしたり、気に入ったり、淡い想いを抱いたり、依存したり……逆に嫌ったり、腹を立てた人物が『夢』に出ます。
そしてその夢は……その人物も見る夢で。
……私が、『神隠し』に遭わせる形になります」

彼女のその言葉を聞いた俺の、胸の中に熱い気持ちが溢れてきた。
これは悲しみや哀れみ、同情といった優しい類のものではない。
怒りだ。

「何で、何でそんな事を……」

音央はあの子は普通に、楽しく、明るく生きていたいだけだ。
ごく普通の女の子として、本当は弱いのに強がって生きているそんな普通の子だ。
それなのに、あの子が大事に思った人物はみんな消えていく事になるなんて。
それも、彼女は何も知らずに覚えている事すら出来ないなんて……。

「そうしないと、あの子は消えてしまうからです」

淡々と、感情を押し殺した口調で『神隠し(チェンジリング)』は告げた。
彼女のその言葉にふと疑問を感じた。

そうしないと消えてしまうなんて、まるでロアみたいじゃないか。
こっちの彼女。『神隠し』が消えてしまうなら、解らなくはないが……。
…………いや、まてよ?

「もしかして……」

疑問を感じた俺は彼女の方に視線を向けた。
着物姿の彼女は俯く事もなく、俺をじっと見つめていた。

「『神隠し』をしないと。消えてしまうのは、君じゃなくて……」

「はい。あちらの『音央』です。だってあの子は……」

辺りの風景は俺もよく知っているものになっていた。
そこは、俺達が通う高校の、生徒会室。

『怖いにゃー』

声がした方を見ると、詩穂先生が机の上にくったりしていた。

『何がですか?』

音が資料の整理をしながら尋ねていた。

『神隠しがこの街で起きているんだって。やっぱりまたモンジくんに相談しようかにゃー』

『モンジに?』

『そ、モンジくん。とっても頼りになるよね?』

『あいつ……ですか。確かにアホですけど……まあ、頼りにはなる……かな?』

『誰がアホだ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ