第ニ十話。託された想い
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と全く現れなくなったり。中学生時代に音央が憧れていた先輩も、すぐに記憶の中に登場しなくなったりして。
そして音央本人は、その人物達がいない事を当然のように受け止めていて、平和に楽しそうに過ごしている。
そう。いなくなっているという事が当たり前になっているんだ。
「……『神隠し』か?」
「いなくなった方々の事はみんな私が覚えています。ですが、『あの子』は覚えていません。
……きっと知ったら、あの子の性格なら」
『強気を装っているだけで、基本ヘタレだから……壊れてしまいかねないな。音央なら』
「強気に見えて、実際は繊細だから……真実を知ったら壊れてしまう、か」
「はい。あの子が頼りにしたり、気に入ったり、淡い想いを抱いたり、依存したり……逆に嫌ったり、腹を立てた人物が『夢』に出ます。
そしてその夢は……その人物も見る夢で。
……私が、『神隠し』に遭わせる形になります」
彼女のその言葉を聞いた俺の、胸の中に熱い気持ちが溢れてきた。
これは悲しみや哀れみ、同情といった優しい類のものではない。
怒りだ。
「何で、何でそんな事を……」
音央はあの子は普通に、楽しく、明るく生きていたいだけだ。
ごく普通の女の子として、本当は弱いのに強がって生きているそんな普通の子だ。
それなのに、あの子が大事に思った人物はみんな消えていく事になるなんて。
それも、彼女は何も知らずに覚えている事すら出来ないなんて……。
「そうしないと、あの子は消えてしまうからです」
淡々と、感情を押し殺した口調で『神隠し』は告げた。
彼女のその言葉にふと疑問を感じた。
そうしないと消えてしまうなんて、まるでロアみたいじゃないか。
こっちの彼女。『神隠し』が消えてしまうなら、解らなくはないが……。
…………いや、まてよ?
「もしかして……」
疑問を感じた俺は彼女の方に視線を向けた。
着物姿の彼女は俯く事もなく、俺をじっと見つめていた。
「『神隠し』をしないと。消えてしまうのは、君じゃなくて……」
「はい。あちらの『音央』です。だってあの子は……」
辺りの風景は俺もよく知っているものになっていた。
そこは、俺達が通う高校の、生徒会室。
『怖いにゃー』
声がした方を見ると、詩穂先生が机の上にくったりしていた。
『何がですか?』
音が資料の整理をしながら尋ねていた。
『神隠しがこの街で起きているんだって。やっぱりまたモンジくんに相談しようかにゃー』
『モンジに?』
『そ、モンジくん。とっても頼りになるよね?』
『あいつ……ですか。確かにアホですけど……まあ、頼りにはなる……かな?』
『誰がアホだ
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