第ニ十話。託された想い
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立体映像みたいなものか……」
試しにロッカーや本棚に触れてみたが、擦り抜けた。
『おおっ! こりゃあ面白いなー』
何だか楽しくなってきたその時だった。
「ほんとよ??」
小学生の音央が叫ぶ声が聞こえた。
『ほんとに、プレゼントを買ってきただけなんだから!』
『じゃあなんでそのプレゼントを持ってないんだよ?? しかも吉島先生の誕生日はもうとっくに過ぎてるぜ??
いい加減な事言って本当は誘拐されたんじゃないのかー?
お前、本当は音央じゃないんじゃないかー? なあ!』
『うきーっ! 殴り倒す??』
『ひぃぃ! ごめんなさーい?? 調子に乗りましたぁー??』
『泣いても許さないわよー??』
それは音央が男子に虐められるシーン……ではなく、力押しでなんとかするシーンだった。
殴られた男子に思わず合掌してしまう。
「お巡りさんに保護された私は、疲労とか検査で色々あって、一週間ほど学校を休んだんです。
そして、その一週間の間に『担任』の先生は……『神隠し』に遭いました。
なので、吉島先生という教師は元々副担任だった先生の名前です」
「『神隠し』か……もしかしてあの音央もその先生の事を忘れてしまっているのか?」
担任が変わった事を疑問に思っていない様子の音央。
担任の為に買ったプレゼントは何処かに失くしたようだ。
辻褄が合わないところを、持ち前の強引さで納得させたのだろう。
「あの子は何も知らないままです。全て、私の独断です」
『あの子』……その言い方で確信を得る。
つまり今見ている音央と、ここで語っている『神隠し』は別人なのだ、と。
「『神隠し』に遭った人は消えます。疾風さんも体験した、あの真っ暗な場所で気持ち良く,自我と共に全ての感覚と存在を忘れていくのです。そして……」
視線を『音央』の方に戻すと……。
音央はスクスクと成長していった。
楽しそうに笑いながら、幸せそうに。
強気な性格のせいもあってか、悲しい事があってもへこたれる事もなく、立ち向かう姿勢で挑み、なんとか頑張って生きていた。
そんな音央の様子を、こちらの音央は母親のような包み込む視線で見つめていた。
______まるで、自分の全てを託すかのように。
だが、そんな彼女の視線の先にいる『音央』を見ていた俺はふと疑問に思ってしまう。
記憶の中の音央にはいくつか不自然な点があるような?
そう、記憶の中の音央と俺が知る音央には記憶に差異があるんだ。
例えば、小学生時代の音央は両親と一緒に暮らしていたが、今は当たり前のように親戚と一緒に暮らしていたり。さっき、音央にちょっかいをかけていた少年や宥めていた少女達は、次の学年になる
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