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101番目の舶ィ語
第ニ十話。託された想い
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の子』を『神隠し』ちゃんと一緒に探してきて?」

「あ、う、うん……任せていいんだな?」

「もちろんっ」

キリカはその分厚い本を掲げて、親指を立ててくれた。
……その赤い表紙からは禍々しい雰囲気が感じられて、背筋がゾクゾクした。
だが、俺はキリカに向かって親指を立て返して叫ぶ。

「じゃあ、頼んだよ。キリカ!」

「うんっ。頼まれたっ」

俺は黙り込んでしまった『神隠し(チェンジリング)』の手を引いて和室の先にある……その庭から、外に飛び出した。








2010年。?月?日。?時?分。


『神隠し』である少女の手を引いて、俺は村の中を歩く。
気づけば陽は沈もうとしていた。
その光景は音央の姿を見た、あの日のように真っ赤な夕暮れ時で……。
辺りの景色は確かに『富士蔵村』なのだが、以前に感じた禍々しさは感じられない。
どちらかというと田舎特有の落ち着いた空気や安心出来るような、ホッとするような。
だけどどこか物悲しい……。
そんなノスタルジックな雰囲気だった。

「あの時、なんとなく感じた懐かしさは、この村に来てたからだったんだな」

「はい。おそらく、私の心と既に同調していたからだと……思います」

あの時一緒にいたから、ではなく。あくまで夢の中の存在として語る『神隠し』の少女。
……この少女はやっぱり俺がよく知る『音央』ではない。
そんな気がした。

「てっきり、音央が眠っている時の存在が君なのかと思っていたが」

『妖精の神隠し(チェンジリング)』というからには、夢の中で音央とロアがチェンジしていると思っていたのだが。

「…………」

沈黙した彼女の顔を見る限り、そんな簡単ものではないようだ。

「音央……なんだよな?」

「はい……それは間違いありません」

やや、間が空いてから返事を返してくれたが、彼女の顔は浮かないままだった。
その顔はどちらかと言えば……悲しんでいるのではなく、悩んでいる顔。

「でも、貴女の知っている『音央』とは別人です」

「……そうか」

「はい。
……疾風さんは、それでも……私を救おうとしてくれますか?」

疾風さん、と呼ばれる事に違和感があるが。
モンジ呼ばわりに慣れたって事か。
まあ、仕方ないな。

『仕方なくねえよ??』

頭の中に俺の声で俺が叫ぶ。そう、消えなかったんだ。俺もアイツも。
モンジがモンジ呼ばわりされて頭の中でぎゃんぎゃん騒いでいるが……それは放って置くとして。
目の前の少女を救うかという問いにはこの答えしかないな。

『救うのは当然だ』

「救うのは当然だ」

全く同じタイミングで重なる俺とアイツの声。

「結果、貴女のよく
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