第十九話。奈落の底で……
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瞬間、目の前に広がったのは______舗装された道路、広大な田畑、遠くに見える古い民家。
ここは______??
脳がズキンと痛み出した。
そうだ。ここは……。
『富士蔵村』______俺達が脱出した、あの村だ!
脳内に広がったのは『村』に関する断片的な記憶。
ここが『人喰い村』だと言うのは思い出せても、まだ自分の事は思い出せない。
つまり、それだけこの、『四度目の夢』の効果は確実性が高いという事なんだろう。
と、その時。
聞き覚えがありまくる声が聞こえてきた。
「あはははっ、まさか自分から消え去ろうとするとは思わなかったよ?」
窓の外からその語尾上がりの特徴的な声が聞こえてきた。
この声は……。
「朱井詞乃……」
そう。窓の外に立っていたその少女は見慣れた赤いワンピースを着た『人喰い村』のロア。
朱井詞乃だった。
「へえー。私が誰かって事は覚えているんだ?」
「自分の事は解らなくても君の事はよく覚えているよ。
君は『人喰い村のロア』だろ?」
「質問を質問で返すなんて……ズルイな。
そうだよ、私はこの村のロアだから……村がある限り何処でも存在出来るんだよ。
それより……そっか。モンジさんは自分の事を覚えていないんだ?」
おっと、余計な情報を与えてしまったかな?
「ああ。確かに俺が誰なのかとか、自分に関する記憶は一切ないな」
「ふーん。なのに消えようとしているんだ。
自分の事も解らないのに……変な人?」
まあ、そう思うのが普通の反応かもな。
誰だって自分から消えたいなんて思わない。
いくら困っている美少女の為だからと言っても自分から消え去ろうなんてするワケがない。
誰だって他人より自分の身が大事だからな。
だから詞乃ちゃんに変な人だと思われるのは仕方ない。
だが……それでも構わない。
「俺が消えなければいいだけだろ?
それで『神隠し』は終わりだ!」
確かに俺は。
自分の事を思い出せない。
自分についての何もかもが思い出せない。
この現象がつまり……。
忘れられて『消える』という事なのかもしれない。
だけど逆に考えればいいんだ。
「確かに君の言う通り俺は自分の名前も思い出せない。
だけど逆に考えれば『自分を思い出す事が出来れば消えない』んだろ?」
そう詞乃ちゃんに言うと。
彼女は爆笑した。
「あははははははは?? そんな事、今まで出来た人はいないのに?」
笑うところか?
ここ……。
何で爆笑されているのか解らない俺は振り返って背後に佇んでいる少女の方を見ると。
着物を着た少女は酷く不安そうな顔をしていた。
______今まで出来た人がいないのに出来るはずがない。
今の言葉はそ
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