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101番目の舶ィ語
第十八話。魔女の刻印《キスマーク》
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を見るその瞳に含まれているのは、罪悪感かな?
何に罪悪感を抱いているのかは解らないが。
いつだって彼女は俺に優しくしてくれた。
いつだって彼女は柔らかく接してくれた。
それは、俺が喜ぶ事をするのが嬉しい、そんな態度だった。

「うーん……どうして、って言われても困るけどな」

「そう……ですよね」

俺の言葉に、再び俯いてしまう彼女。
俺はその場から立ち上がって、そんな彼女の前まで移動した。
驚いたように顔を上げた彼女の目を見て、俺ははっきりと告げた。

「だけど、そんな寂しそうな顔を見に来たんじゃないのは確かだ」

「……ほんとう、スケコマシさんなのですね」

そう呟いた彼女の頬がほんのり赤く染まった。
それだけで満足しそうになったが……そうだ、俺はここに、何かをしに来たんだ。

「だから、良ければ話てくれないか? 君が悲しんでる理由を」

「記憶……ないんですよね?」

彼女に言われて納得した。
そうだ。今の俺には自分が誰なのか、ここが何処なのか、何をしに来たのか。
一切合切全く解ってない。

「ああ、全く思い出せないな」

「なのに、どうしてそんなに自信満々なんですか?」

「それは多分……」

「多分?」

「君が悲しそうな顔をしている事に比べれば、俺がどんな状態かなんて事は些細な問題だからだ」

そう、多分そう思うのが『俺』だ。
目の前に辛そうな女の子がいるなら、自分の状態は一旦置いておく。
もちろん、自分の状態が気にならないわけはないが、優先順位は女の子の方が高い。

「それに、ここで見て見ぬふりをしたら寝覚めが悪くなる……安眠は大切だからな」

「ほんとう、貴方は今までここに来た人達とはまるで違いますね」

「あれ? 今までにもここに来た人達がいたのか」

「ええ、そして……四度目には、あちらにお連れしていたので」

俺は少女の視線の先、障子の方を見た。
何故かは解らない。
解らないが……俺はあの先を知っている気がした。
確か、ちょっとした板張りの廊下があって、庭が一望できる窓があり……。
その先は______。

「そして貴方も……ここに来たからには、連れて行かないと行けません」

「連れて行く?」

「そうです。ここではないあちら側のの世界。もう、戻れない場所に」

連れて行かなければいけない。
だから彼女はこんなにも苦しそうなのだろうか。

「それが私の」

考え事をしていた俺の手をぎゅっ、と握った少女は______。

「『神隠しのロア』としての役目だから」

ポロッ、と大粒の涙をその瞳から流した。

______ロア。
その言葉には聞き覚えがある。
とても重要で、忘れてはいけない
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