第十七話。夢の少女の正体は……
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ステリアモードじゃない、こっちの俺に主人公の素質はない。
自分で言うのもアレだと最近思うようになってきたが……俺はちょっと争い事に耐性がある普通の高校生だからな。
だから映画や漫画の『主人公』のように、ヒロインを救う事なんてできやしない。
できないと思うが……。
だけど、俺が助けてやりたいのはヒロインじゃない。
友達を助けたい。だから俺は……。
______『神隠し』に挑む。
有名な誰でも知ってる都市伝説『神隠し』。
それに挑むのはロアにしてみれば、かなりの自殺行為なのかもしれない。
だが、俺がなんとかしたいのは『神隠し』ではなくて、『音央』なんだ。
「なあ、キリカ」
「うん?」
俺の声に返事をしながらもキリカは導くみたいに歩き続ける。
その行き先は何処なのか、というのは何故か気にならない。
「ありがとうな」
「わ、何もしないうちから感謝された」
驚きながらも嬉しそうなか、ニンマリ口になるキリカ。
「どんな状態でもモンジ君はモンジ君だからね。だから私は私なんだよ」
「ん?」
キリカの言葉に何か引っかかるが俺がその疑問を口に出す前にキリカは続け様に告げる。
「ちゃんと、魔女的に打算で行動しているって事。モンジ君に優しくするのも、ぜーんぶ自分のためだから、感謝し過ぎる必要はないんだよ?」
「ははっ、そう言ってくれるのが既に優しいよな、キリカは」
後で打算で動いていた、と思われないため、ではなくて。
キリカはこう言っているんだ。
「だから気にしないで」と。
……キリカを気にせず、俺は俺のやりたいようにやればいい。
そう、教えてくれたのだ。
だが、なんとなく気になった事があるから尋ねてみる。
「なあ、何でキリカは俺にそんなによくしてくれるんだ?
俺以外にも有能な『主人公』っていうのはいるんだろ?」
キリカのオカルト講義の中で、何人かの『主人公』の話を聞いた事がある。
彼ら、彼女らは歴史に名を残した『英雄』や『勇者』、或いは『聖女』で俺に比べたら間違いなく本物の『主人公』だった。
それに比べて俺は一高校生に過ぎない。
ヒステリアモードになれば別だけどな。
「モンジ君はモンジ君だからだよ」
さっきと同じ言葉を理由にするキリカ。
俺が考え込むとキリカはクスクス笑って手を強く握り締めてきた。
「魔女が、打算以外で……こうやって手を握りたくなるような子だから。普段の君はなんというかな……『力』とか『情報』以外の何かで私達を支えようとしてくれるからね」
力や情報ではない何か。
俺にそんなものがあるとは思えないんだが……。
「だからきっと、『神隠し』にだって負けないんじゃないか、って思っちゃった」
「そう、なのか?」
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