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或る皇国将校の回想録
第四部五将家の戦争
第五十七話 布石の一謀、布石の一撃
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も頷いた
「猫を伏せさせておけ、撃ち方と散弾で仕留める」

「中隊打ち方用意、躍進後に斉射」
 カチカチと騎兵銃を装填する音が響く。
頂上に寝そべっていた古参下士官が手を挙げた
「騎兵砲出せ」
 わらわらと体躯の良い兵達が騎兵砲を丘の頂上に押し上げ、そのまま適当な角度をつけようと怒鳴るようにあれこれと下士官が檄を飛ばす。
 剣虎兵小隊は匪賊のようにかっこにばらばらに丘の裏にはりついていいる。銃兵達の戦ぶりとはなったっくことなったそれだ。
「躍進!距離三十!」
 中隊長もまた丘の上に立ち鋭剣を振り下ろす。
兵達が小隊長に続きおのおの駆け、小隊長がたちどまると隊列のようなものをつくり、そして撃った。
 整然と横列を組む銃兵達とは異なる疎らでややながい射撃音、そして砲声、咆哮。
 中隊の一部が爆ぜ、そして鉛の礫が降り注ぎ――組織だった部隊は一瞬で半壊した。
この初手で既に戦術的勝利は決まったようなものだ。だが大勢が決してもそれで終わりではない、後の戦いを考えねばならない。

「逃がすな!かかれ!」
 西田が鋭剣を振るいながら叫ぶ!
猛獣達が跳び、騎上の者達を地に引き摺りおろし、そして屠ってゆく。
西田は供回りの数人の兵達を連れ敵の後方へと駆けてゆく。
予想の通り、そこには脱出しようとする騎兵がいた。<帝国>兵は練度が高い。これを逃せば厄介な事になるだろう。
側道に剣虎兵大隊が展開していることを知られるのはマズい。
 なにしろ剣虎兵部隊を擁しているのは第三軍内では第十四聯隊だけだ。それはおそらく<帝国>軍も察知しているだろう。
「隕鉄!」
 彼の相棒は跳び、彼女の狩場から逃げ出そうとする獲物へと襲い掛かる。
「猛獣使いめが!」
 猟兵が喚きながら銃剣を構え、〈蛮軍〉の指揮官に襲い掛かった
「――っと!」
西田は猟兵の銃剣を受け流し、鋭剣で相手の喉首を裂く。周囲を見回す、既に後方を確保する事に成功した。猫二匹に歴戦の兵達がついている、これで最短経路での脱出は不可能。
 中央部もすでに壊滅状態だ。この中隊に配属された者達は数人がかりの蛮兵に銃剣で屠られるか、剣牙虎に狩られるか、いずれにせよ本国に帰る事はなく死ぬだろう。
いよいよこれで決着がついたことになる。

「あくまでとりあえずだけど――勝ちだな」




 再び林の中、中隊の将校達は中隊本部に指揮官集合をかけられていた。といっても中隊本部は将校の立ち話程度であることに変わりはないが、こんどは大隊本部の面々も加わっている。
「――こちらの損害は軽傷者のみ、敵部隊は壊滅に成功しました」
 
「やはりこちらも張っているか。となると本道でも既に本腰をいれて叩くつもりなのは確実」
 聯隊鉄虎大隊長の棚沢少佐が腕を組み唸った。
「側道の部
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