五十四話:戦いの始まり
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めて死への恐怖を抱く。ようやくと言ってもいい程遅くに感じ始めた死の予感に耐えられなくなった彼はアーシアの拘束を解き、必死に頼み込む。
「アーシア! お願いだ…っ。僕を…助けてくれ!」
「え…えっと……」
「その必要はない。そもそも、君が教会を追い出されるはめになったのは、こいつの罠だ」
その言葉にアーシアは驚きの表情を浮かべてヴィクトルの方を見やる。一方のディオドラは血が足りなくなってきたせいか、真実をこのタイミングでばらされたせいか顔を真っ青にして血の滴る口をパクパクとさせている。そんな醜い様子にヴィクトルはフンと軽く鼻を鳴らしてから言葉を続ける。
「こいつはわざと自分で傷を負い、君に近づき、君が追い出されるように仕向けた。そして、時期を見計らって接触して感動の再会を装い、最後には真実を告げ絶望に苦しむ君を犯す予定だったらしい」
知らされた余りに悪趣味な計画にグレモリー眷属は怒りの眼差しで地に伏せるディオドラを睨みつける。それに対して、ディオドラは惨めに出鱈目だと喚き声を上げるが、ヴィクトルがうるさいとばかりにその腕を踏みつけ、槍を喉元に突き付けたことで黙らざる得なくなる。
「君の手下のフリードから聞いたことだ。ああ、恨み言ならあの世でたっぷりと言うがいい」
「い、嫌だ! 死にたくない! 死にたくない! 僕はまだ死にたくないっ!!」
自身の殺害宣言と、フリードを殺したという事を暗に仄めかす口ぶりに、ディオドラはいよいよ余裕がなくなり、死への恐怖を叫び始める。そんな様子にグレモリー眷属は思わず、憐れんでしまう。
事の中心人物であるアーシアもその優しさから許してあげてもいいのではないかと思い、ヴィクトルの方に視線を向けるがヴィクトルはその視線を受け流して冷たくディオドラを見下ろすだけだった。その様子からは彼がディオドラを逃がす気など欠片もないことが十二分に感じられた。
「僕は崇高な悪魔だぞ!? それなのに…人間なんて……劣悪種に…殺されてたまるか!」
「その劣悪種の痛み……存分に味わうがいい―――地獄の業火でな!」
直も喚くディオドラに対して地獄に住むとも呼ばれる悪魔に対して皮肉のようなセリフを吐き捨て、ヴィクトルは槍を振いディオドラの体を跡形もなく消し飛ばす。ヴィクトルは自分が善人だとは欠片も思っていないし、ディオドラのような人間を責められるほど自分が綺麗な人間だとも思っていない。だが、許せなかった。人の愛情を弄ぶディオドラが。
例え、娘の愛情を利用した身であっても許せなかった。同族嫌悪と呼ばれるものかもしれないと思うが自分はただこいつのことが気に入らなかった。理由なんてそれだけで十分だと彼は血を振るい落として槍を消しながらそう結論付ける。
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