第6章 流されて異界
第115話 守り切れ!
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インコース高目のストレート。更に、ファールを打たせてカウントを稼ぐ。これはプロ野球の投手でも難しい。
「ハルヒ、三振前のバカ当たりと言うヤツや。気にする必要はないで」
二塁手の守備位置から声を掛ける俺。但し、これはハルヒに対して掛けた言葉と言うよりは応援団に対しての解説的な意味。先ほどのファールは野球に詳しい人間でも危険な兆候――痛打を喰う前兆だと感じたとしても不思議ではありません。
六組のチームが持って居るのは人の和のみ。しかし、ここまで十点も取られて来て応援団の方に負けムード、と言う物が漂い始めているのも事実。
今のこの場は、どうも通常の物理法則よりは精神に左右される魔法の空間へと相を移しているように感じますから、あまり雰囲気を悪くするのは問題有りです。
「当たり前よ」
あたしがこの程度の相手に打たれる訳はないでしょう。
審判から投げられた真新しいボールを自らの手になじませながら、自信満々の口調。但し、おそらくは根拠のまったくない言葉で返して来るハルヒ。ただ、少なくともファイティングポーズは取っている以上、未だ大丈夫。
球技大会が始まってからずっと変わらずのノーサインで投じられる第三球。このバッテリー……と言うか、涼宮ハルヒに遊び球と言う物は存在しない。
――ハズ。今までの例から考えるのならば。
相変わらず強気のインコース攻め。但し、今までと違い膝元。コースはやや外れて居る。
しかし!
打者の手元で鋭く曲がる。右打者、インのボールゾーンからストライクゾーンへと鋭く曲がるスライダー。
俗に言うインスラと言う球。真ん中から外角に曲がって行くスライダーは良く使用されるが、それを右バッターのインコースのボールのゾーンから曲げる事は珍しい。……が、しかし、珍しいが故に、ここ一番で精確にコントロール出来るのならば、この球は決め球として使用出来る!
虚を衝かれて見逃して仕舞う自称リチャードくん。完全にしてやったりの表情のハルヒ。
一瞬の静寂。しかし――
「ボール!」
最早最大の敵と化した主審の宣告。
「ボールやと!」
思わずキレて大きな声でそう叫び、主審の元に歩み寄ろうとする俺。
但し、これは失策。俺のこう言う部分が感情を完全にコントロール出来て居ない、と師匠から指摘され続けた点。確かに一時的な感情によって仙術の威力が上がる事もありますが、そんな安定しない物には自らの生命を預ける事は出来ません。
俺が二、三歩前に進んだだけで気圧されたように、半歩後ろに踏み出して、まるで逃げ出す寸前のような体勢を見せる主審。これで確信する。コイツが、何か確固たる信念が有って一方的な判定を繰り返して居た訳ではなく、矢張り、かなり軽い気持ち。しかし、暗い思考の元に
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