暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第115話 守り切れ!
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校庭にただ折り畳み式のパイプ椅子を並べただけの簡単なベンチに向かって進む彼女に【話】し掛ける俺。これは実際の言葉にして問い掛ける事の出来ない内容。
 そして、これから先の試合展開に取って非常に重要な内容と成るもの。

【未だ、俺たちに有利な陣を敷く事が出来ないのですか?】

 ……を。
 そう。いくら俺がマヌケでも、昼食後、少しの時間的な余裕は有りました。その間をただ怠惰に過ごした訳はない。
 結局、色々な企ては不発に終わり、最後に残ったのはコレ。天の時を完全に押さえられた可能性が高いのならば、せめて地の利だけでもコチラで押さえるべき。所謂、孟子曰く。天の時は地の利に如かず。地の利は人の和に如かず。……と言う言葉に従ったと言う事。

 ただ、

【未だ成らずよ。もう少し、時間が掛かると思うわ】

 相手の意図がまったく読めない以上、最初から後手へと回され、現在も防戦一方。まして、相手は周到な準備を行った上での介入で有った様なので、そう簡単に地の利を奪い返せるとも思えないのですが……。

 自らの守備位置に戻り、しかし、難しい顔のまま綾乃さんの【答え】を反芻する俺。おそらく、水晶宮から応援がやって来ない状況もここが原因なのでしょう。
 つまり、予備の人員はすべてこの陣の構築に回され、こちらの決勝戦に回せる人材がいなくなったと。

 ただ、逆に考えると、陣の構築を優先したと言う事は、ヤツらは決勝戦の間は大人しく野球の試合を行う可能性が高い、……と水晶宮の方では考えて居る、と言う事でも有ります。

 差し当たって、この九番を何とかして打ち取れば、少なくともこの回で試合が終わると言う事態は防ぐ事が出来るハズ。そうすれば時間的な余裕が生まれて、コチラに有利な陣を敷き直す事も可能でしょう。
 そもそもこの世界は俺たち地球産の生命体が暮らす世界。異世界からの来訪者が一時的に地の利を得たとしても、それは仮初の客に過ぎない。

 ……はずですから。

 俺が考えを纏めた瞬間、ゆっくりとした、しかし、大きな、ランナーの事をまったく考慮していないモーションから、九番の自称リチャードくんに対して投げ込むハルヒ。
 球速は今まで投げて来た球とほぼ同じ。更に、俺の忠告通り、しっかりと気の乗った球が真ん中やや外寄りのコースからボールゾーンへと切れ込んで行く!

「ボール」

 しかし、僅かにボール。確かに、今の球はストライクゾーンからボールゾーンへと流れて行くスライダー。ボールに成ったとしても不思議ではない。
 但し――

「ハルヒ。腕が少し横振りに成って居るぞ。オマエさんのフォームは基本に忠実なオーバースロー。初回はもう少し腕を上から振っていたような気がする。
 確かに、初球は相手の打ち気を誘ってボールに成る変化球から
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