暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第115話 守り切れ!
[4/12]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

 この試合の賞品扱いに成って居る俺自身の微妙な立場、と言う物を理解して居るのか?

「二回の裏の状況を思い出してみろ、ハルヒ」

 少し、ムッとしながらも、それでも先ほどから何か聞きた気にしていた理由がようやく理解出来たので、その部分だけはスッキリした気分で答える俺。

「あの時の状況って……」

 相手は強打者。ワンナウト満塁のピンチ。但し、満塁であるが故に、苦手なクイックの必要もないので、ランナーなしと同じ下半身始動のゆったりとしたフォームからしっかり腕を振って投げられる状況。
 指折り数えながら、俺の問いに対して律儀に答えを探すハルヒ。

 対して、俺の方は有希にボールを要求。

「後ろの守りも信用していて、更に、例え打たれたとしても取り返してやる、と言う言質も取っていた」

 有希からボールを受け取りながら、そう言葉を続ける俺。但し、守備に関しては両翼に若干、不安が残るのも事実なのですが、その辺りに関しては忘れる事とする。

「あの時の十分に気の乗った球と、この回が始まってからの球とを比べたら、状況が違い過ぎて同じ球が投げられる訳がないやろうが」

 行き成り、相手の四番にサード強襲の内野安打を打たれて、その後はランナー警戒のクイックや、視線のみとは言え牽制を交えながらの投球。これでは、二回の裏のバッターオンリーのピンチの状況で投じられた球が投げられる訳がない。

「少なくともハルヒはプロ野球チームのエースやない。それドコロか、リトルリーグ出身の野球経験者ですらないでしょうが」

 その日の調子や、その他の要因によって投げる球にムラが出て来て当然。普通はそう言う部分を失くす為に、みんな練習に励むのやから。

 気が乗った、などと言うダメなスポーツ関係の指導者みたいな、所謂精神論を口にする俺。但し、俺が今回、口にした内容は事実。
 高が精神論。されど精神論。
 少なくともこの回が始まってからハルヒの投じた球で、二回の裏で自称ランディくんを打ち取った球に匹敵する威力を秘めた球は存在して居ません。かなり近い威力を持って居る可能性のある球ならば、五番のセカンドを三振に斬って取ったアウトローの高速スライダーに光る物を感じましたが、それも感じる程度。

 現実に光輝を発した球は存在しなかったはずです。

 まして俺は、その精神を拠り所とした仙術を行使する存在。そして、現在のハルヒもそう言う魔法に近しい存在へと進み始めた人間。
 このような人間たちに取っては、精神論と言う物も強ち否定すべき言葉とはならない物と成るのも事実。

「其処までの事が理解出来たのなら、次のバッターに投げられる今が、再びあの球が投げられるチャンスと言う事も理解出来るやろう?」

 そうして、有希から受け取ったボールをハ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ