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メフィストの杖〜願叶師・鈴野夜雄弥
第三話
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ようとした。だが、その男を金久は「待て。」と言って引き留めたため、男は何事かと金久を見た。
「何ですか?」
 男は不思議げにそう問うと、金久は厳しい表情で男に言った。
「お前、今の話を聞いていたな?」
「ええ。エロ満載の話と違法万歳な話。」
 そう平然と男が返してきたため、三人の顔は見る間に青くなった。そして、水中は慌てて男を室内へと入れてドアを閉めるや、男は非常に不機嫌な表情を見せて言った。
「何すんですか?」
 そんな男に、今度は金久がニタリと笑って言う。
「お前、金は欲しくないか?」
 そうして懐から札束を取り出した。
 男はどういう意味か覚り、さも汚いものでも見るかの様に返した。
「そんな紙切れ要りませんよ。どうせ貰ったって死ねば使えないしね。」
 男のその言葉に、三人は顔を見合わせた。今までにこんな人間に会ったことはなかったのだ。
 こうした場合、普通は金を受け取る。そうして後は知り合いのやくざに後始末させていたのだ。自分達の手を汚すことなどなかった。
 しかし、今の状況は自分達でどうにかする他なく、その手段を悠長に選んでいる間もない。そのため、水中は意を決して男の首へと飛び付いて締め上げた。
「聞かなければ良かったんだ…聞いたお前が悪いんだよ!」
 水中は的確に男が窒息するように首を締め上げる。初老とは言え彼の握力は強く、男は見る間に青くなって行く。と、思った。
「へぇ。確かに、これだと死ぬかな。」
 そんな状況で男はしれっとそう言ったため、水中は驚愕して男から飛び退いた。それには流石の金久も山瀬も目を丸くしたが、その中でふと明かりが消えた。
 三人は狼狽した。殺そうとした男は死ぬどころか平然としており、その上で視界が奪われたのだから。
「お前達、人の命を何だと思ってるんだい?」
 その暗闇の中から声が響く。それは三人の目の前にある男から発せられた筈だが、それは部屋全体から響き、三人はその異様さに震え上がった。
「問いに答えて欲しいんだが。」
 尚も響く声に、金久は恐れの中に怒りを感じ始めて返した。
「人間の命なぞ道具と同じだ!」
「ほぅ。それじゃ、君達の命も単なる道具と言うことだな?」
 その問いに金久は益々怒りをつのらせ、それに対して大声で返した。
「馬鹿を言え!我々は選ばれた者なのだ!命を道具として扱って良い至高の人間としてな!」
 金久がそう言い切るや、その声は盛大に笑い声を上げた。
「何が可笑しい!」
 その笑い声に金久の怒りは最大にまで膨れ上がった。だが、目の前にいたはずの男の気配が消えていたことに気付き、金久は用心深く闇の中を見回した。
 側には水中と山瀬がいることは分かる。しかし、どれだけ見回しても男の影どころか気配さえ掴めない。
「己、どこに隠れた!」
 またして
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