第三話
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て愛想振り撒いてきてよ。御婦人方のウケが良いんだから。」
「分かってるさ。ついでに何人か目をつけとかないとな。」
「ヤラシイわね。夜もそこそこにしといてよ?寝不足で失敗…なんて洒落にならないし。」
「はいよ。」
にへらと笑う有栖川に、山瀬は溜め息を吐いてそこを出た。
この二人の会話は、ガラス一枚隔てた研究室にいた六人には丸聞こえだった。が、彼らは見ざる言わざる聞かざるに徹していた。些細なうっかりが自分の命さえ吹き消しかねないからだ。
そんな彼らに、有栖川は笑いながら言った。
「君らさ、最近良いセックスしてる?」
嫌がらせにも程がある。だが、そんな有栖川を無視し、ただ黙々と仕事に集中していた。
「詰まんない奴らだなぁ…。ま、いいや。」
黙々と働く研究者達を後に、有栖川はそこを出ていったのだった。
時は夕を過ぎ、もう藍の濃くなる時刻となっていた。
「理事長、そろそろ…。」
「ん?…おぉ、もうこんな時間か。今日はここまでだな。そう言えば有栖川君は?」
「彼でしたら…いつものことです。」
「ふん…相変わらず性欲の塊だな。ま、分からんではないが。」
そう言って金久はニタリと笑う。そんな彼に、水中は薄ら笑いを浮かべて言った。
「どうですか?今日はあそこに行かれては。」
「そうだな…たまには他の女を抱くのも一興か。」
そう金久が水中に言った時、不意に山瀬が入って来て、さも忌々しげに二人へと言った。
「お二人もですか?全く…男は皆そうなんですね。」
そんな山瀬に、水中が苦笑いしつつ返した。
「山瀬君。君だってこの間、リネン室で患者の青年と良いことをしていたと聞くが?」
「あれはストレス発散させてあげてたのよ。一ヶ月も入院で出来なかったんだから、お二人と一緒にしないで下さいますか?」
山瀬はそう言って一端話を切ると、直ぐに別の話しに切り替えた。
「それであの新薬ですが、かなり好調です。今日は二回投与しましたが、このまま様子見で宜しいかと。」
「そうか。では、副作用の心配は少ないのだな?」
山瀬の報告に、金久は満足げに頷いてそう返した。
「今のところは。この間5グラムで一日三回投与してショック死したホームレスは、解剖した結果、肝臓がかなり弱っていたためと判明しています。他の薬も常用していたためにショック死したものと考えられます。」
「なら、それに近い薬とでは副作用が出る…と言うことか。何にせよ、今回で成功すれば新しいデータが採れる。そうして完成に近付ければ、もっと金が入るというものだ。」
そう金久が言うや、三人は顔を見合わせてほくそ笑んだ。
だがその時、ドアが開いて三人の前に一人の男が姿を見せた。
「あ…間違えました。」
男は目の前で唖然としている三人を余所に、そう言ってドアを閉め
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