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メフィストの杖〜願叶師・鈴野夜雄弥
第三話
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客人が居たねぇ。」
「えっ…?」
 釘宮はもう少しで表情に出そうになったが、どうにかそれを隠して返す。
「そうでしたか。ですがここは喫茶店ですので、やはり様々なお客様がいらっしゃいます。私達は、そうしたお客様に一時でも安らげる店にしたい…そう思っております。」
 釘宮の言葉に、二人は成る程と言った風に頷き合ったのだった。
 夜も更け、釘宮が小林と鈴木の二人をホテルへと送って戻ると、既に時は十一時を疾うに回っていた。
「あ、オーナー。お帰りなさい。」
「大崎君、帰ってなかったのかい?」
「まぁ…片付け終んなくて。」
 大崎が苦笑しつつそう答えると、釘宮も苦笑で返す他なかった。未だホールには洗い物が残っている様で、鈴野夜が一人で片付けている。
「小野田さんは?」
「上がらせました。一応メフィストに送らせましたから。」
「そうか。ま、雄君に任せると大変だろうからな…。」
 そう半眼で釘宮が言うと、大崎は再び苦笑した。小野田の鈴野夜への想いは、未だに健在なのだ。
「あ、帰ってたんだ。」
 そこへ鈴野夜が入ってきた。
「…何?」
 釘宮と大崎に何だか睨まれているような気がしたため、鈴野夜は眉をピクつかせて言った。
「いや…何でもない。それで、片付けは終りそうか?」
「ああ、このカート分で終りだよ。大して無いから、夕飯食べてからやっておくから。まぁ君はもう休んで良いよ。どうせ精算も終わってるんでしょ?」
 鈴野夜が珍しく自分から仕事をすると言う。
 だが、釘宮も大崎も驚かなかった。
 彼はこう言ったのだ。

- この後は私の仕事。だから君達は休みたまえ。 -

 そのため、釘宮も大崎もそのまま厨房から出ていったのだった。
 二人がいないことを確かめると、鈴野夜は店内を回って施錠を確認てから夕食を取り、そしてホールの明かりを消した。
 尤も、彼にしてみれば明かりなぞ無くとも充分見える。そうして後、彼は徐にチェンバロに手を掛けて物悲しい曲を奏した。
「ラモーの“エンハーモニック"ですか…。」
「よくご存知ですね。」
 そう言って演奏を止めると、鈴野夜は声の主へと問い掛けた。
「貴方は、誰に会いに来たのですか?」
 そう問われた人物は、間を置かずに答えた。
「“メフィストの杖"に会いに来ました。」
 すると、周囲に蒼白い焔が広がり、それまであった闇を切り裂いた。
 その人物…角谷はそれに驚愕したが、それよりもチェンバロを演奏していた人物を見て驚いてしまった。
「貴方は…!?」
 角谷はてっきり鈴野夜…先程までいた背の高い店員が演奏していると思っていたのだ。
 いや…強ち間違いではない。そうではないが、そこにいた人物の風貌が違っていたのだ。
「私はロレ。貴殿方は私を“メフィストの杖"と呼んでいますね
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