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メフィストの杖〜願叶師・鈴野夜雄弥
第三話
V
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言った。
「あの客…そうとう厳しい状態なんじゃないのか?」
「まぁ君…感付いてたのか…?」
「まぁな…見りゃ分かる。そんな人間が毎回“あの席"に座る様になってんだから、嫌でも分かるだろうが。で、何だって?」
 そう聞かれた鈴野夜は、つい先程話していたことを伝えるや、釘宮は眉間に皺を寄せて返した。
「一年前ったら…新型インフルエンザで大騒ぎになってたよな。確か…ワクチンも間に合わず、結構な死者を出した筈だ…。」
「そうか…。」
 前年、関東を中心に新型インフルエンザが流行した。毒性は弱かったが、効能が高いと考えられた薬がどうにも効かず、死者の大半は肺炎など他の病気を併発して亡くなった。
「でもあれ…確か…。」
 そうだ。政治家や資産家など権力者の子供なども多く罹ったが、誰一人死んだ者はいなかった。その点はマスコミも叩いていたが、結局は終始うやむやにされて終わった。
 それらを考え併せて二人が出した結論は…

― 死者は研究対象にされていた。 ―

 そこに行き着いてしまったのだった。
 そのため、やっと角谷の「その死が金でどうにかなったかも知れないとしたら?」の意味が解ったのだった。
 だが、他にも多くの死者を出したこの件で、何故に彼がこうも歪んでしまったのか…?他の家族とて同じ痛みを抱いている筈だが、きっとここまで…壊れるまでにはならない。少なくとも、そうならない様に努力し、一歩ずつでも未来へと歩み出すはずだ。
 だとしたら…彼は何かを聞いたか…或いは見てしまったか…。
「何にせよ、お前の所に依頼人として来ない限り、こちらとしては手詰まり…だな。」
「そうだね…まぁ君…。」
 そうして二人は溜め息を吐いた。所詮は喫茶店のオーナーとそこのバイトでしかない。心を多少癒す程度は出来ても、解決など出来ようもないのだ。
 但し…彼、ロレとメフィストになら解決する力がある。それには、どうしても“契約"が必要なのだ。
 ロレはとある事件で、自分が決めて勝手に助ける…と言う事を自ら禁じた。それにメフィストも同意したため、こうして今に至ってもそれを曲げてはいない。この話しは、いずれ語ることになるだろう。
 さて、二人はそこで考え込んでいても仕方無いと事務所から出るや、メフィストが一人で半泣きになりながら右往左往していた。客がかなり入っており、メフィストがホールと厨房を駆けずり回っていたのだ。
 尤も、大半は常連客なため、皆様孫を見るような笑みを浮かべ「そう急がんから。」と、泣きそうなメフィストに気を使ってくれていた。
「済まん。後は私と鈴野夜で対応するから、お前は休憩行ってこい。」
「あぁ…助かった…。」
 釘宮の言葉に、メフィストは心底感謝した。本当に泣きそうだったのだ…。
「え?まぁ君…僕は?」
 鈴野夜は些か顔を
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