第三話
I
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後退る見事なオーケストラ…の楽器達だった。
「まぁ君…オーケストラでも組織するつもりなのか?」
メフィストが目をパチクリしながら問い掛けると、釘宮はしれっと返した。
「無論だ。僕はバッハが指揮したコレギウム・ムジクムをこの店で再現したいと考えてたからな。」
その言葉に、鈴野夜とメフィストは呆然と立ち尽くすしかなかった。
― あぁ…きっと扱き使われる…。 ―
そんな当たり前のことを今更思う二人であった。
チェンバロが搬入された二日後、演奏会は滞りなく行われた。
告知は鈴野夜に話をした時に店へと張り出していたが、大々的に告知する程ではなかった。無名の演奏者なのだから、結局はお客に「こんなことするので、あんまり驚かないでね。」程度と言えようか。客入りを期待…とまではいかないのが現状だ。
それよりも、演奏するためのステージ作りが大変だったと言えた。
元から演奏するステージはあったのだが、最初からは使えないと分かっていたため、そこへ飾り棚や観葉植物などが置かれていた。それを全て取り除いて掃除をし、チェンバロを設置する…中々の重労働であり、それらを二日弱で行うと言うハードなスケジュール…。無論、大崎も引っ張り出されていた。
「オーナー、こんなもんですかね」
「上出来だ。ま、よく閉店後の数時間で出来たと思うよ。」
釘宮はそこまで言うと、何かを思い出した様に手をポンッと叩いた。
「そうそう。明日は僕も演奏するから、二人助っ人を呼んであるから。」
「助っ人って…まさか…。」
大崎は少しばかり顔を引き攣らせて問った。
以前、釘宮が一日私用で店を空けた時、二人の人物が変わりに入ったのだが…それがまたてんで使えなかった。釘宮とは旧知の仲ということだったが、またあれではどうにも始末に悪いと考えたのだ。
たがしかし…天は大崎に味方してはくれなかった。
「勿論、西原達だ。」
「止めて下さい!この店を潰す気ですか!?」
大崎は叫んだ。悪夢再来…それだけは天に弓引いても避けねばならない。
だが、運命とはかくも残酷なものだ。得てしてそう言うもの…とも言えるが。
「もう呼んであるから。今更断れないし、今からじゃ他に伝手もないしな。」
「俺に…言ってくれれば…。」
後の祭りとは思いつつぼやく大崎を、釘宮は苦笑しつつ見ていたのだった。
そうしている間に、鈴野夜とメフィストがチェンバロを運んできた。二人は慎重に慎重を重ね、何だか顔色が悪い。もし少しでも傷付けたら…そんな恐怖と戦いながら運んでいるのだから、その心労はいかばかりか…。
だがふと見ると、そこへもう一人加わっていた。
「あれ?小野田さん…今日休み入れたよね?」
釘宮は首を傾げてそう言った。小野田は運ぶことに神経を集中していたらしく、三人でス
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