第三話
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母さん…父さん…。なんで死んでしまったんだ…。
俺は…これからどうすりゃいいんだよ…。
- そうだ…俺も…。 -
彼は思った。自分も死ぬべきなのだと。
彼の両親は、ある電車事故で亡くなった。その時、彼は帰って来るはずの両親を、いつもの駅で待っていた。
その日は彼の誕生日であり、高校入学の祝いも兼ねて両親と外食する約束をしており、父親はレストランへ予約までして楽しみにしていた。
しかし…彼の元へ戻ったのは、冷たくなった両親の亡骸だった…。
その事故での死者は十六名。その中の二名が彼の両親と言うのは、余りにも惨い話しと言えた。
だが、その様な惨状の中にあって優先的に手当てを受けた者が多くあった。そのどれもが軽度の怪我にも関わらず真っ先に病院へと送られたのだ。
それは資産家や政治家の身内であり、それがなければ彼の両親だけでなく、亡くなった十六名が助かったとも言われている。
- きっと…これも運命…。 -
そう胸中で呟き、彼は線路の前に歩み出ていた。
その手には両親の位牌を持ち、目には全く生気がなくなっていた。涙も枯れ果て、彼は生きる希望を見失っていたのだ。
それも仕方の無いことと言えるだろう。
一年前には祖母が、半年前には妹が…と、家族が次々に死んでいったのだから。彼が運命と受け取るのも、無理からぬことなのだ。
彼がふと遠くを見れば、向こうから電車のライトが近付いてくる。
彼は電車から見えぬよう線路の傍に身を潜め、絶対に停まり切れぬ所で飛び出すつもりだった。
- 母さん…父さん…もうすぐだから。芳江…婆ちゃん…こんな俺を仲間にしてくれるかな…。 -
彼は胸中でそう呟き、その時を待った。
そして…彼は躊躇いもせずにそこへ身を投げた。
響くブレーキ音、乗客達の悲鳴…。
だが、そこに彼の姿は無かった。
車掌が慌てて飛び出して辺りを見回すが、そこには死体どころか血の一滴も無かった。
「…どういうことだ…!?」
車掌は頭を抱え、ただ茫然と立ち尽くしていた…。
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