第四十五話 博士その十三
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「何がわかるか楽しみじゃ」
「お願いします、ただ」
ここで菊は博士に問うたことがあった、それはというと。
「博士は色々と博士号を持っておられますね」
「学問のことか」
「幾つ持っておられて。それでお幾つでしょうか」
「博士号は。幾つじゃったかのう」
そう問われても自分ではわかりかねないといった調子だった。
「さて」
「ご自身では、ですか」
「ううむ、何十か。いや三桁」
「博士号を三桁ですか」
「あるかのう」
こう首を傾げさせつつ答えるのだった。
「ろく子君なら知っておるか」
「あっ、百二十一かと」
先程の知的な美人が答えた、博士の横に来て。
「先日のものも含めて」
「そうじゃったか」
「はい、確か」
「そうらしいのう」
「博士号が百二十一ですか」
「日本以外の国のものもあってな」
それで、というのだ。
「医学、法学、文学、理学、神学とな」
「様々な分野ですね」
「そうじゃな、そして年齢は」
こちらの話だった、今度は。
「これは言えぬ」
「そうですか」
「まあ百五十歳と思ってくれ」
これが博士のこの件での返事だった。
「それ位でのう」
「あの、百五十歳って」
「普通にギネスに載りますよ」
桜と菫が唖然とした顔で言う。
「何かもっと年長な様な」
「そんな気もしますが」
「ほっほっほ、ギネスも申請しなかったら載らんのじゃ」
博士は驚きを隠せない少女達に飄々と笑って答えた。
「しかもじゃ」
「しかも?」
「しかもっていいますと」
「戸籍の年齢も何とかなるのじゃ、謄本は無理じゃがな」
「あっ、戸籍謄本はそうですね」
向日葵は戸籍謄本についてはすぐにはっと気付いて言った。
「あの本は」
「うむ、抄本は出せるがな」
役所も出してくれる、こちらはだ。
「しかし謄本はな」
「そちらはですね」
「うむ、謄本は出してくれぬ」
「滅多なことでは」
「それこそ自衛隊だの警察だのの入隊に必要でもな」
「抄本ならって言ってですよね」
「謄本は出してくれぬ」
こちらは決してなのだ。
「滅多にのう」
「出して欲しいって言ってもですね」
「そうじゃ、役所の人も意地になるまでに出してくれぬ」
「そこまで厳しいですよね」
「その人の本人さえ知らないことが書かれておる」
「色々なことが」
出生の秘密やルーツがだ、そうしたことが書かれているのでだから謄本だけは出してくれないのだ。役所にしても。
「だからのう」
「ということは博士も」
「うむ、謄本にはな」
本当の生年月日がというのだ。
「書かれておる、とはいってもそうした戸籍制度が出来たのは明治時代からじゃ」
「その時代より前は」
「どうかのう」
笑ってこのことは誤魔化すのだった
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