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処女神の恋
7部分:第七章
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うして私が」
 泣き続けたまま言う。
「オリオーンを、どうしてオリオーンを」
 従者達はそれに何も言えない。アルテミスは顔を上げオリオーンをもう一度見た。本当に眠っているようであった。
「オリオーン、今まで一緒にいてくれて有り難う」
 泣いたままであった。その目でオリオーンを見ていた。
「貴方のことは。忘れないわ」
 そしてその右手を掲げる。するとそこに淡く白い光が宿った。月の光であった。
「永遠に。これからもずっと」
 白い光はゆっくりと女神の手から離れた。緩やかにオリオーンの方へ向かっていく。
「私は貴方を忘れない。これから何があっても」
 光はオリオーンを包んだ。そして上へとあげていく。
「アルテミス様、一体何を」
「オリオーンは何時までも私と一緒にいるわ」
 彼女は天へと昇っていくオリオーンを見上げながら言った。
「これからもずっと」
「ですがアルテミス様は」
「ええ、わかってるわ」
 従者達が何を言いたいのかを。彼女は処女神なのだ。男と一緒にいることは許されていないのだ。そうした意味でアポロンの策略は言い訳ができるのだ。処女神である妹を守った、だがそれでもアルテミスはオリオーンを忘れたくはなかったのだ。
「それでも。心は一緒であっていいわよね」
「心は」
「そうよ、だからオリオーンは空にあがるの」
 オリオーンの身体は天空にあった。そしてそこで星になっていた。
「ああ・・・・・・」
「これで私はずっとあの人と一緒なのよ」
「オリオーン様が星に」
「何て雄々しい御姿」
 オリオーンは星達に姿を変えていた。そこでその勇敢な姿を、生きている時と同じ姿を誇示していた。
「私が夜月の馬車に乗る度にあの人に出会えるわ」
 アルテミスはまた呟く。
「何時までも、何時までも」
「永遠に」
「そう、心はいつも一緒なのよ。だからオリオーン」
 天空にいるオリオーンに語り掛ける。
「私の罪を許して。そして何時までも二人で」
 女神の目から銀の涙が止まることはなかった。彼女は泣き続けていた。だがオリオーンと一緒になった。女神は月の馬車を駆る度にオリオーンと会うのであった。いつも彼のことを想うのであった。


処女神の恋   完

                           
                  2006・6・22


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