アインクラッド 後編
圏内事件 2
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”だからだけでもないだろう。同時に、マサキがこれだけ冷淡でいられるのも、ただマサキが他者との関わりを避けているからだけではない。
“この世界を、現実として認識できているか”。それが、マサキとキリトたちの一番の差だ。この世界が現実だと思えているから、出来事が身近に感じられる。この世界が現実だと思えていないから、他者の悲しみに冷淡でいられる。意志を持たずとも、惰性で生きられる。何人もの命を一方的に搾取しても、のうのうと日々を過ごしていける。
例えるなら――そう、まさにゲーム。自分と言うキャラクターを操作する、一人称視点のゲーム。一時は違ったが、戻ってしまった。彼が消えた、その瞬間に。
その後また幾つかの質問をしたところで、今日は終わりと言うことにしてヨルコを元の宿まで送り届けた。アスナはもっと安全な血盟騎士団本部に部屋を用意すると提案したが、彼女は頑なにそれを拒否した。恐らくは、その過程で半年前の事件が公になるのを避けたかったのだろう。
転移門広場まで戻った時には、既に午前十一時近かった。これからどうするか、マサキが幾つか案を思い浮かべていると、不意に前を歩くキリトと目が合った。その瞬間、キリトは辺りを覆い始めた霧で身を隠すように、急に忍び足になってアスナの隣を離脱、マサキの隣にポジションを取った。怪訝そうに顔を歪めるマサキに、キリトが耳元で言う。
「……なあ、アレ、やっぱり褒めた方がいいのかな?」
「アレ? ……あぁ」
キリトが横目でチラチラと視線を送っているのは、斜め前を相変わらずツカツカと小気味いいテンポで歩いていくアスナの背中。というか、服だった。要するに、女性がいつもと違う服装をしてきたことに対して困惑している、と言うことか。前言撤回。やはり小間使いにもなれそうにない。……まあ、マサキとてそう言った類のノウハウなど欠片も持ってはいないのだが。
「知らん。大体、俺は女性とデートなんてしたこともない」
「え、マジで?」
「悪いか?」
「い、いや、そういうわけじゃ……」
パチパチと大きく数度瞬きしながらエミとマサキを見比べたり、かと思ったら今度はアスナとマサキを見比べたりと、あからさまにうろたえるキリト。そんなことを暫し繰り返した後に、やはり一人では心許ないのか、懇願の眼差しで両手を合わせる。
「でもさ、ホラ、旅は道連れってよく言うだろ? だからさ、ここは一つ二人で……」
「断る。やりたいなら一人でやれ」
「いや、別にやりたいわけじゃ……」
「二人とも、何話してるの?」
突き放されたキリトが尚も食い下がろうとしたところ、キリトの逆を歩いていたエミがひょっこりと顔を覗かせた。その声がアスナにも届いてしまったらしく、彼女も足を止めて振り向く。
うっ……と、半歩後ずさりながらキ
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