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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
圏内事件 2
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一匹のレアモンスターと遭遇し、それを屠った。そしてドロップしたのが、騒動の原因となる一つの指輪。

 その指輪は特に装飾が施されているわけでもなく、むしろ地味な見た目のものだったのだが、なんとその効果は「装備したプレイヤーの敏捷値を二十上昇させる」という、現在の最前線でもドロップが確認されていないほど強力なマジックアイテムだった。
 その後、指輪の処遇を巡り、「自分たちで装備して使うべき」とのグループ――カインズ、シュミット、そしてヨルコがこちら側だったらしい――と「売却して得た利益を公平に分配すべき」とのグループにギルドが割れ、口論の末に多数決を取り、売却が決定した。中層を商いの場とする商人では到底売り捌けないレアアイテムであるため、ギルドリーダーが前線の街へ赴いて競売屋(オークショニア)に委託することとなる。リーダーは下調べに時間がかかるだろうとの理由で前線に一泊する予定で出かけ――そしてそのまま、二度と帰ってくることはなかった。
 死亡時刻はリーダーが街へ向かった日の夜中、死亡は《貫通属性ダメージ》……《睡眠PK》であると推測された。
 普段中層にいるプレイヤーがドロップしたレアアイテムを売りに前線へ向かったところ、PKに遭う……全てを偶然の一言で片付けるには、あまりにも出来すぎている。しかも、その日レアアイテムを持ったリーダーが前線に出ているということを知っているのは《黄金林檎》のメンバーだけであり、と言うことは当然、ギルド内の誰かが犯行に及んだ可能性が高い。――そう考えたメンバーたちは、互いに疑心暗鬼に陥って、やがてギルド《黄金林檎》はメンバーの解散により消滅した。

「…………」

 語り部を失った空間が、そこだけ世界から隔離されたみたいに静寂に呑み込まれた。
 テーブルの上に頬杖をついたマサキがそのままの姿勢で視線を左右に振ると、四人は皆沈痛そうな面持ちで俯いて静止していた。動いているのは、マサキの視線だけ。
 ボス戦やシリカの一件等ごく僅かの例外を除くと未だ三人以上で戦闘した経験がないマサキは、当然ながらそのようなギルド内の問題とは無縁だった。しかし、血盟騎士団と言うアインクラッドきっての大ギルド幹部であるアスナは、そして多くの中層ギルドに助っ人として参加してきたエミは、そんな人間関係の嫌な部分を何度も目の当たりにしてきたのだろう。キリトも同じような顔をしていると言うことは、このようないざこざはネットゲームではありふれたことなのかも知れない。

 あるいは――。
 考えながら身体を後ろに倒し、頬杖から背もたれに体重を移動させると、静まり返ったテーブルに椅子の軋む音がよく響いた。
 ――俺がおかしいのか、か。

 彼らがああも胸を痛められるのは、自分自身に似たような経験があるからだけでも、彼らが単純に“良い奴
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