アインクラッド 後編
圏内事件 2
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たんですか。……ヨルコと言います。今日はわざわざ来ていただいて、ありがとうございます」
もう一度深々と頭を下げるヨルコ。彼女は弱々しく首をもたげ――二人の後方に向いた両目を丸くさせて驚いた。
「うわぁ、すごいですね。その服ぜんぶ、アシュレイさんのお店のワンメイク品でしょう。全身揃ってるとこ、初めて見ましたー」
と、それまでの気落ちした様子は何処へやら、丸くした両目をキラキラと輝かせて勢いよく喋り出す。その眼差しを追って振り返ると、アスナが微妙に口元を引きつらせていた。心なしか、その目は「もう止めて」と言外に言っているようにも思える。
「それ、誰?」
「知らないんですかぁ!?」
が、そんな彼女の意思(?)とは裏腹に、二人の会話は更にヒートアップ。ヨルコは質問したキリトに呆れ半分の視線を向けながら、興奮を抑えきれない様子で続ける。
「アシュレイさんは、アインクラッドで一番早く裁縫スキル一〇〇〇を達成したカリスマお針子ですよ! 最高級のレア生地持参じゃないと、なかなか作ってくれないんですよー」
「「へーっ!」」
キリトの声に、エミの声が被さる。ヨルコと同じように彼女の瞳が輝いているのは、やはり女子という生き物の本能ゆえなのだろうか。
感心と憧れ、二つの色を帯びた三つの視線を浴びたアスナは、頬を急に紅潮させながら一歩後ずさり、
「ち……違うからね!」
とそっぽを向いて歩いていってしまう。その後姿を眺め続けている三人を横目にマサキが続くと、ようやく我に帰った三人が駆け足ぎみについて来た。エミが一足早くマサキに並び、その後ろをキリトとヨルコが歩く。するとそのうち、ヨルコが小さく、感心したように呟いた。
「でも、本当にびっくりしちゃいました。攻略組の方って、皆さんすごくおしゃれなんですねー」
「いやあ、今日のアスナが特別なだけだと思うけど……って、皆さん?」
「はい。マサキさんが着てる、あのワイシャツとスラックス……さっきチラッとロゴが見えたんですけど、あれってシェイミーさんのところの服ですよね? アインクラッド中を渡り歩いているから会うことすら難しくて、もし会えても服を作ってくれることは滅多にないっていう、伝説のNPCお針子さんの。……噂だと、彼女の作った服は防具じゃないのに特殊能力が付いているって聞いたことあります」
「え……」
その瞬間、マサキとヨルコ以外の足が止まった。鳩が豆鉄砲を食らったような顔で佇みながらも、その瞳は高速で回っている。そして……三人は見つけてしまった。黒いスラックスの前後のポケットに目立たないよう筆記体で刺繍された、ローマ字をかたどった小さなロゴを。
「…………」
面倒なことになった……と、顔をしかめるマサキ。
「「「えぇぇぇーーーっ
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