5部分:第五章
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っていた。そして彼を見る目も。何もかもが変わっていた。
「これからも。お願いしますね」
「わかりました」
彼はアルテミスにとってはなくてはならない狩のパートナーとなった。それは彼にとって非常な名誉であり、そしてメロペーにとっても喜ばしいことであった。メロペーはそんなオリオーンの評判を聞くと顔を綻ばせるのであった。
「やはりそうなのですね」
彼女はオリオーンの活躍を聞き笑顔になっていたのである。
「オリオーン様ならば。きっとそれだけのことはして下さると思っていました」
「嬉しいのですね」
「ええ」
それを問う者達にも応える。今にも天に昇りそうであった。
「その様な方が私の夫になって下さるのですから」
「左様ですか」
「オリオーン様」
そして今は女神の側にいるオリオーンに向けて言う。
「何時までも。待っております」
彼女はさらにオリオーンに恋焦がれるようになっていた。これはアポロンにとって大きな誤算であった。そして彼の誤算はそれだけではなかった。
彼のもう一つの誤算、それは妹アルテミスに対してであった。彼女は処女神である。だがやはり女であることに変わりはなかった。そう、男に恋をすることもある女であったのだ。
彼女は狩の時はいつもオリオーンと一緒にいた。そしてそれ以外の時も。遊ぶ時も食事を摂る時も。いないのは寝る時に水浴びをする時、そして彼女の第一の仕事である月の馬車を引く時だけであった。そうした時以外は常にオリオーンを側に置いていたのだ。
その話すこともオリオーンのことばかりであった。それを見てアポロンは妹がオリオーンに対してどういった感情を持っているのかすぐに察したのであった。
「まずいことになったな」
彼は僕である烏の話を聞いてその整った顔を顰めさせていた。丁度今は彼は太陽を引き終えたばかりで夜になっていた。その上にはアルテミスがいる。
「あいつが。オリオーンにか」
上にある月を見上げて呟く。そこに妹がいるのだ。
「はい、間違いありません」
彼に忠実な烏はそう報告していた。
「アルテミス様はオリオーン様のことが」
「それだけはならないな」
アポロンの口調が強いものになった。
「アルテミスは純潔でなくてはならない」
「はい」
表向きはその理由であった。アルテミスは処女神なのだ。その彼女が男に恋をするということはあってはならないのだ。アポロンの言っていることはそうした意味においては正しい。
だがそれはあくまで表向きの理由である。実は彼には本当の理由があった。
(おのれオリオーン)
彼は彼を憎んでいたのだ。
(メロペーだけでなく我が妹まで)
自分が手に入れるつもりだったメロペーだけでなくアルテミスの心まで奪った彼が憎かったのだ。男として、そして兄としての嫉妬が彼の
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